チーム・バチスタの栄光


難易度の高いバチスタ手術(拡張型心筋症に対する術式)を100%成功させていた大学病院で、3度連続で術中死が起きた。これは医療ミスなのか? それとも殺人か!? そこで、病院長に内部調査を押し付けられたのが、窓際医師の田口(竹内結子)。適当な報告で仕事を済ませようと企む田口だったが、その矢先、これを一刀両断する男が現れた。名は白鳥(阿部寛)、厚生省から派遣されたキレモノ役人である。ここに田口・白鳥の調査コンビが結成された! 海堂尊の「チーム・バチスタの栄光」を原作に映画化。

『チーム・バチスタの栄光』作品情報 | cinemacafe.net

TOHOシネマズ宇都宮にて。
2月の公開から2ヶ月が経ちましたが、今日やっと観る事が出来ました。ずっと観たかった作品だったので見逃さずに済んでよかったです*1


この作品のすごいところはバチスタ手術のもつ緊張感をはっきりと伝えた点にあります。
バチスタ手術というのは動いている心臓を一度人為的に止めてしまい、自力で鼓動できるように一部を切除して縫合してから再度動かすというかなり過激な手術なのですが、この一度止めた心臓を再度動かす瞬間の緊張はとても言葉で表現できるものではありません。心臓が止まっているという事は普通に考えたら死んじゃった状態なわけですから、その心臓を再度動かそうというのは死んだ人を生き返そうというくらい無茶なこととしか思えないのです。


止めてからの処置は完璧。でも、この心臓はふたたび動き出してくれるのかどうかはやってみないとわからない。動けば成功、動かなければ失敗。つまりは患者の死に直結するわけです。
この緊張感たるや尋常ではないことは容易に想像出来ると思いますが、その現場の空気をうまく表現し、高い伝導率で見ている側にもその緊張感が伝わってきました。


ただ、それ以外の部分はかなり説明やら表現が省かれていて、その点はとても残念でした。
例えば白鳥が調査に加わる経緯やら解決に至るまでのプロセスは正直ないも同然でしたし、そもそも白鳥が加わった事で調査にどのような影響があったのかが伝わってきませんでした。彼がすごいといいたい事は分かるし、彼がいなかったら解決しなかったといいたいのもすごく分かるのですが、でもそれが明確に描かれていない以上それは見ている側が勝手に補完するしかないわけです。でも補完しようにも白鳥がどんな人間なのかという部分やバックボーンに関する情報がほとんどないので補完出来ないのです。


結果としては原作を読んでいないと楽しめない作品になっていたと感じました。その点はすごく残念でした。


話は戻ってこの作品のよさについてなのですが、上にも書いたのですが、この作品のいちばんのよさは現場の緊張感ある空気をうまく伝えている部分だと思います。
今までどおり、うまくいっていた方法でやっているのになぜかうまくいかないという不安は、見ているだけでも体が震えてくるくらいにつよく感じました。自らの手に生命がかかっているという重圧やその命が理由もわからず手からこぼれ落ちてしまうという恐怖はどんな言葉でも語れないくらい大きなものだと思います。
それをうまく伝えているという点は非常にすばらしかったです。


そういえば、この作品が公開されてから2週間くらいした時に2chにある映画板にスレッドのタイトルにこの作品のネタバレが書いてあるのを見つけてしまいました。というわけで犯人は最初から分かっていたのでそういう意味では思ったほど楽しめなかった気がします。
(この作品が悪いわけではなくて、ネタバレを見てしまった私がよくないです)


公式サイトはこちら

*1:TOHOシネマズ宇都宮では来週金曜日でこの作品の上映は終わりのようなので、今週末が最後のチャンスでした