クワイエットルームにようこそ


28歳のライター・佐倉明日香(内田有紀)は、ある日目が醒めると、白い部屋に拘束されていた。そこは通称“クワイエットルーム”と呼ばれる、女子だらけの閉鎖病棟内にある保護室だった。見知らぬ場所、見知らぬ人――。記憶がない上に、担当医と、同棲相手の鉄雄(宮藤官九郎)、双方の同意がないと退院できないという逃げられない状況に直面した明日香は、ほかの個性強すぎる患者たちとともに、この非日常的な世界で生活することを強いられる。次第に自分と真っ向から向き合うことで、再び生きる勇気を取り戻していく明日香。しかしある手紙によって全ての記憶が甦り、さらにここに来た本当の理由が突きつけられ…。

『クワイエットルームにようこそ』作品情報 | cinemacafe.net

渋谷シネマライズにて。久しぶりの初日初回舞台挨拶の回です。
自らの意思に反して精神病院の閉鎖病棟に閉じ込められた一人の女性の物語。ところどころに盛り込まれた小ネタが面白く、思わず笑ってしまうシーンも少なくなかったのですが、それに加えて、倒れたショックで一時的に喪失した記憶が徐々に戻っていく中で彼女が自分自身と向かい合い見つめなおしていく流れがとてもよかったです。主演の内田有紀さんの表情のひとつひとつがとてもグッときました。


この作品を見て痛感したのは、「あなたは本当にまともな人なの?」と面と向かって問われた時に、何を根拠にそれに対して答えを提示出来るのかと考えると意外に難しいなということです。自分自身が正常かどうかなんてのは絶対に自分からは判断出来ないし、判断出来ると思ってるとすればそれは単なる思い上がりなんだなと。
だって自分の基準で自分を計ったところでその異常性を検知なんて出来るわけないんですよね。


「自分はここにいるべき人間ではない」と言い続けた明日香が、とある事件で気付いてしまったこと。それは「自分はここに入るべくして入る事になった異常性を持った人間」なんだという事実の突きつけ方は非常にセンセーショナルでした。そこに至る直前までは、「明日香は正常なんだけどちょっとした手違いで病院に入った」っていう事を見ている側に植えつけておいて一気に視点を変えられたわけですからかなりの衝撃でした。


そんな感じでとにかく印象に残るシーンが多かったのですが、クワイエットルームの中で自分の異常性に気付いた明日香に、ミキが泣きながら「おーい」と呼びかけるシーンがすごくよかったです。五点拘束された明日香とわずかに開いた扉から覗きこんでいるミキが互いに呼び合ってるそれだけなのに、とても印象に残りました。


随所に盛り込まれた笑いのセンスもすごく好きだし、何よりここまでいろんな業界から人を集めた映画を他に知りません。アバウトな性格の医師を演じた庵野監督や、旅館の番頭を演じたしりあがり痔さん。それ以外にも多くの人が出演されているのですが、これまた全然違和感なし。適材適所だったのかな。個人的にはナースの山岸を演じてた平岩紙さんがすごくほのぼのしてて好印象でした。


笑えるけれど、それだけじゃない。考えさせられるけどそれも含めてすごく楽しい。とても不思議な作品でした。
生きるのって大変な事だ。

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