グロテスク - 桐野夏生


概要をAmazonから引用。

世にも美しい妹ユリコを持つ「わたし」は、ユリコと離れたい一心でQ女子高を受験して合格し、スイスに住む両親と離れて祖父とふたり暮らしを始める。エスカレーター式の名門Q女子高は厳然とした階級社会であった。佐藤和恵という同級生が美人しか入れないという噂のチアガール部に入ろうとして果たせず、苛立つのを、「わたし」は冷やかに見守る。
夏休み前に母が自殺したという国際電話が入る。ユリコが帰国するというので、「わたし」は愕然とする。同じQ女子高の中等部に編入したユリコは、その美貌でたちまち評判になるが、生物教師の息子木島と組んで学内で売春し、それがばれて退学になる。和恵はQ大学から大手のG建設に就職した。―そして二十年後、ユリコと和恵は渋谷の最下層の街娼として殺される。

桐野夏生さんの作品はリアルワールド以来2冊目です。あの作品はとても面白かったので、長編に挑戦してみました。


本書もリアルワールド同様に、複数人の視点で物語は進んでいきます。
このやり方は変わっていないはずなのですが、今作は読んでて辛いのです。息苦しいという表現が一番近いのですがそれもなんだか違うなぁ...という妙な感覚。どうも出てくる人全てが異常者なので、その視点を負わされてしまっているという状態になってしまいました。特に後半の「和恵の日記」の狂気のすごさは、ぜひ一度読んで欲しいです...。


この作品のタイトルである「グロテスク」という単語は本書の中で一度だけ出てきます。ですが、それが桐野さんの表現したかったグロテスクなのかと言われると違うんじゃないかというかとても違和感。

努力によってついた差による些細な差別から生まれつきの環境に基づく差別といった幅広い差別を書くことで、世の中のグロテスクさ、特に女性だけの世界のグロテスクさを表現されたかったのかなと思います。そのグロテスクさもまた、読んでいて辛いと感じさせる原因となっていたのは間違いなさそうです。


この年になるとそれほど世の中に絶望したりなどしないと思っていましたが、改めて生きていくことの困難さを痛感させられた作品でした。重過ぎたので、当分この手の作品はいいや...。