「あと少し、もう少し」読んだよ

あと少し、もう少し

あと少し、もう少し

あの手に襷を繋いで、ゴールまであと少し!誰かのために走ることで、つかめるものがある―。寄せ集めのメンバーと頼りない先生の元で、最後の駅伝に挑む中学生の夏を描くみずみずしい傑作青春小説。

http://www.amazon.co.jp/dp/4104686026

最近はマラソンブームとよく言われていますが、個人的にはマラソンよりもグループで走ることがブームになっているような気がしています。

ここ数ヶ月、おもしろそうなマラソンの大会がないかどうかをネットで探すのがほぼ日課のようになっていますが、マラソン大会ほどではないものの駅伝やリレーの大会開催予定を目にすることが増えてきました。先日参加した6時間耐久もリレーがありましたし、それ以外にもあちらこちらで駅伝やらリレーといった競技大会が開催されているようです。

リレーや駅伝って「走る楽しさを仲間と共有できる」というイメージがあるのでたしかにおもしろそうだなと思いますし、わたしも機会があればやってみたいなと思っています。なんてなかなかいっしょに走る人がいないんですけどね。


本作は駅伝に参加するメンバーそれぞれが各区間を走りながらそれぞれが過ごした大会に至るまでの日々を回想しながら、タスキをつないでいくというちょっと変わった群像劇でしたがこれがもうすばらしい傑作でした。駅伝に出るために集まった生徒たちが、駅伝の練習や学校生活、そして大会への参加をともに経験して同じ時間を共有していくことで、じょじょに互いへの理解を深めていく部分がとても読んでいてうれしくなるし、自身が日常を過ごす際にはではなかなか気づかないささやかな変化を時間のテンポを変えて描くことで伝えやすく描いているところがすごくうまいなと感心しました。


タスキをつなぐという行為は当事者たちにとっては大きな重みであり、その重みを考えると一人で走った方が気楽なんじゃないかと思います。一人で走れば失敗したとしても自己責任でおさまるわけですし、逆に駅伝だと自分のリタイアはチームのリタイアになるわけで、その重責を背負うことを思うとわたしは一人で走った方がいいかなと思っちゃいます。

でも一人で走るよりも、走った先にタスキをつなげたい相手がいると思えばもっとがんばれると思うし、そして受け取ったタスキにはそこまでつなげた人たちの思いがつまっていると思えば、さらにがんばれるような気もします。そういった人と人のつながりをうまくブースターにできるのが駅伝のおもしろさであり、一人で走る以上にがんばれるというのが駅伝のおもしろさを演出しているんだなと本作を読んで気付かされました。


いつか駅伝に出たいです(切実)