これはよい改定だと思ったら...

この週末はさほど観たい映画もなかったので、自宅でテレ東でやっていた「グランドスラム東京大会」を見ていました。
わたしは中学、高校と柔道をやっていたこともあって、柔道を見るのはすごく好きです。今回のような国際試合ではもちろん日本人選手の活躍が楽しみなのですが、5年くらい前までは「組み手を徹底的に嫌って組まずに様子を見て、隙を見つけて足を取りに来てポイントを取ってそれを守りきって優勢勝ち」を狙うスタイルが横行して日本がなかなか勝てない時期がありました。


足を取ることがいいとか悪いという議論はここではしませんが、組んで相手を投げ合うのが柔道なんだというのは日本国内では当然過ぎてあえて明記するほどのことでもなかったためにルール上は相手の背中がつくように投げればいいとしか書いてなかったのです。足をとるという行為も結局はそのルール内でやっているわけで、それは非難するのも何となく違うんじゃないかなと感じます。
そもそも、足を取る行為にだってそのとり方によって名前は違いますが、「朽木倒し」とか「もろ手がり」なんていう名前がついていてれっきとした技として認められているのですからそれが悪いとはなかなか言えなかったというのが実際のところだと思います。


とは言え、わたしはどうもこの足をとる行為が好きではなくて、見てて全然楽しくなかったのです。
相手の組み手を全部切って、腰を低く構えて足を取りに行くことのどこが柔道なんだと思っていたのです。ルール上は問題ないかも知れませんが、このまま行くとレスリングと区別できなくなるんじゃないかと懸念していたのでした。

 国際柔道連盟(IJF)は14日、東京都内で幹部会を開き、タックルなど攻防の最中にいきなり下半身を取る行為を禁止し、1度でも違反した選手を反則負けとする新ルールの導入を決めた。世界ランク上位者が争う来年1月のマスターズ(韓国)から適用する。

http://sankei.jp.msn.com/sports/martialarts/091214/mrt0912141835001-n1.htm


昨年は効果が廃止されたことで優勢勝ちのハードルが低くなり、さらに消極的行為にはものすごいスピードで指導が与えられるようになったために組まずに逃げ回ることがとても難しくなりました。そして今年は上記のニュースのとおり、足をすぐに取りに行く行為が反則になったために組まずに足をいきなり取る行為が一切出来なくなりました。


上のニュースでも書かれていたのですが、ここ数年の変化そのものはたしかに日本柔道にとっては福音と言ってもよい変更が多いと感じています。誰もが組み手をしっかり取って一本を取りにいく柔道というのはたしかに美しいし、見ていて楽しそうなのですが、でも本当にこれでよかったのかなという気持ちも少し残っています。



と、ルールの改定内容についていろいろと考え込んでしまいましたが、そもそもこんなにものすごく大きなルール変更をしてしまうこと自体ちょっと怖いなという気はしていて、それが今回のルール変更を素直に喜べない一因になっているような気がします。この調子でいくと、いずれもっと恐ろしいルール*1の成立を許すことになるんじゃないかなと考えるととても怖いんですよね。


さまざまなスタイルを許容するのか、それともルールでそのありようを制限すべきなのかという観点だけで考えていたつもりでしたが、今後の柔道の行方についての不安がふくらんでしまいました。

*1:10秒以上組んではいけないとか、パンチは3回までOKとかいろいろ