
- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/06/25
- メディア: 文庫
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あの夏の日、少女たちは川のほとりにある「船着場のある家」で合宿を始めた。夏の終わりの演劇祭に向けて、舞台背景の絵を仕上げるために。それは、楽しく充実した高校生活の最高の思い出になるはずだった。ひとりの美しい少年の言葉が、この世界のすべてを灰色に変えるまでは…。そして、運命の歯車は回り始めた。あの遠い夏の日と同じように―。運命の岸辺に佇む少女たちの物語。
http://www.amazon.jp/dp/4120035875
恩田さんに書いてくれてありがとうと、お礼が言いたくなるほどとても心に残る作品でした。
ドキドキしながら読みすすめ、読み終えそうになるともったいなくてちょっと戻り、読み終えてからもふと作品のことを思い出してしまうほどみりょく的な作品でした。恩田さんの著書の中では「夜のピクニック」がダントツで好きだったのですが、それに並ぶかそれ以上に好きな作品としてランクインしました。
わたしは、うまい人が書いた文章を読むとその文章が色として感じられます。逆にあまり上手ではない人の文章は無色透明というか色はまったくイメージ出来ません。対象となる文章や書いた人を好きか嫌いかはあまり関係が無いようで、苦手な文章であっても色がちゃんと見えるものもあります。ちなみに自分の書いた文章はいつも無色透明です...。
で、この作品は淡いピンクと濃い群青色が2:8くらいの比でペタペタ塗られているようなイメージが浮かんできたのですが、色自体がかなり鮮明でそのイメージに圧倒されてしまうほどでした。高校生の夏休みというこれ以上ないほど魅力的な舞台設定と、その素敵な場所に自分もいあわせていると錯覚してしまいそうなほど臨場感あふれる文章には本当に参りました。私のツボというツボを抑え尽くした一冊です。
ちなみにこの本が目についたのは著者に惹かれたからではなく、表紙が酒井駒子さんだったからです。以前、湯本香樹実さんの「春のオルガン」の表紙が酒井さんに書かれたものだというのは紹介しましたが、あれ以来酒井さんの絵がとても大好きになってしまいました。この作品の表紙は本書の内容をまさに一枚の絵として表現しているようなそんな適切さを感じさせられます。本書のあとがきで恩田さんが書かれていたように、少女に分類される女性のみがもつ特有の空気がきっちりと詰まっていて、加えて本書全体の空気を表している鋭い表現だと感じました。こういう表紙の本はとても大事にとっておきたくなります。