KIDS


寂びれた町の工場で働くタケオ(玉木宏)と、この町にやってきたばかりの少年・アサト(小池徹平)。性格も境遇も全く共通点のない2人だったが、ある日タケオがアサトの持つ不思議なパワーを目撃して以来、2人は友情を深めていく。その後、ダイナーで働く女性・シホ(栗山千明)と仲良くなり、3人で笑い合う日々が続いた。だがやがて、アサトとタケオ、それぞれが抱える心の傷と向き合う瞬間が訪れる…。乙一のベストセラー小説「傷−KIZ/KIDS−」を映画化。

『KIDS (2007)』作品情報 | cinemacafe.net

宇都宮ヒカリ座にて。
小池徹平玉木宏ダブル主演のラブストーリー。と、一言でまとめてしまうと完全に誤解を招きそうですがそういう映画ではないです。
登場人物それぞれが持っている傷をテーマにどうやってそれを乗り越えていくのかという部分の描き方が非常によかったです。
痛いからといって傷を取り除くだけじゃ解決しない事もあるし、そもそも取り除いちゃいけない傷もあるんだという部分がぐっと伝わってくる作品でした。


それと個々のシーンについてですが、ドライブに行った時や病院の屋上とか非常によい風景のシーンが多くて見所十分でしたが、特に玉木宏小池徹平両名の裸体が何度も出てくるのでこの二人のいずれかが好きであれば見て損はありません。損は無いというか、むしろ積極的に見るべきだと思います。俺が彼らのファンだったら毎日でも見に通います。
ちなみに前の列の女の子は玉木宏の裸を見て「うわぁ(はあと)」と恥ずかしげも無く声を出して喜んでいました。まあ彼女の気持ちも分からないではありません。


ところで。最近、見た映画とその時読んでいる本がうまくリンクすることが何度かあったのですが実は今回もそのパターンでした。



この作品を見ていてすごく感じたのは、なぜアサトはそこまで他人の傷を自分に移そうとするのだろうかという事です。見ず知らずの子どもが怪我をしたときもアサトは迷わず子どもの傷を引き受けていました。


正直に言って私はそんなアサトの行動が気持ち悪くてしょうがありませんでした。


アサトは優しいんだという人もいるかも知れません。たしかにそれはそうかも知れませんが、それでも他人の受けた傷を一手に引き受けるというのは明らかに自らの価値を低く見ているとしか思えませんでした。自らを進んで体を傷つけているわけですから、ある意味、自傷行為と同じだと感じるのです。

周囲の人は、彼らがなんでそこまで人の言いなりになっているのだかわからない。
なんでその人が人のためにそこまでしなければならないのだか、わからない。
しかし恐怖感を持って育った人は、「そうしないではいられない」のである。
フロムは神経症的非利己主義という言葉を使っているが、無意識の恐怖感に動かされているの人は、神経症である。
そこまで自分を犠牲にして人のために尽くさなければいられないのは、心の底の恐怖感が原因である。


104ページから抜粋


アサトは自らの力を使い、自身の傷を母親に移してしまい、結果母親を傷つけてしまったわけですが、その事をずっと後悔しています。そしてその事で母親から嫌われていると思っていますし、同時にこれ以上嫌われたくないとも思っているのです。そして、元々は母親に嫌われたくないと思っていた気持ちがいつの間にか母親以外の人にも適用され、誰からも「嫌われたくない」性格が出来上がったのではないでしょうか。
この話も「自己の犠牲を省みずに他人を救おうとする」というとてもいい話とも受け取れるのですが、アサトが誰かに喜ばれる事に対して喜びを感じているようには見えなかったので、どうしても素直にいい話として受け取れないのです。


ちょうどこんな本を読んでたのでそんなふうに感じてしまいました...。
横で見てた女の子は後半ウルウルしてたので、素直に見ればいい話として楽しめると思うんですよね。本を読んだタイミングよくなかったなあ。。。


それにしても、KIDS==傷というタイトルは巧いなあと感心しました。

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