深呼吸の必要

http://shinkokyu.jp/pc/

ここから抜粋
http://www.chanomafilmfestival.org/j/shinkokyu.htm

ひなみ(香里奈)はさとうきび収穫のアルバイト“キビ刈り隊”に応募し、沖縄のとある離島にやって来た。全員で5人になる今年の応募者らを迎えるのは、平良夫婦と“きび刈り隊”の常連・豊(大森南朋)。3月末日までに約7万本のさとうきびをすべて刈ることが彼女らの仕事だ。しかし、過酷な作業や豊の専制的な振る舞いなど問題はつきない。以前、平良家の隣に住んでいた美鈴(久遠さやか)の手を借りても、わだかまりのあるメンバーたちでは期日までにきびを刈りきるのは難しそうだった。そんな折、不幸にも豊が交通事故を起こしてしまい、事態は絶望的な状況になるが……。

すっきり見れそうな内容の青春映画として期待していましたが、それだけではない生きるとは...、働くこととは...といったテーマについて改めて考えさせられるような素晴らしい作品でした。これから働こうという学生さんや働く事に疑問を持ち始めた人にはおすすめしたい作品です。


まずは最も心に残った有期限雇用者の問題についてピックアップしてみます。


豊が交通事故を起こしてしまったことで以下のような問題が湧き上がってきました。

    1. 作業で怪我をしても保険も労災もおりない
    2. 怪我をして働けない間の生活保障が何も無い


早朝に起きて朝から夕方までしっかり働き、夜は早く寝て次の日に備える。休みの日は海で遊んでリフレッシュ。週・月・年の一定単位ごとに契約を結んで、嫌だったら他へ行けばいい。
これだけ見ると魅力的な生活に見えていたのですが、結局それらの魅力も↑の2つの問題で全て帳消しになってしまうくらい深刻なのです。たしかに自身の健康状態を保てている限りはこの生活が約束されますが、一度その歯車が狂ってしまうとそれを立て直すためには全てを自力でやるしかありません。保険、失業手当といったものが無いだけで普通に働いている人の何倍も苦労することは火を見るより明らかです。
もちろん、そのこと自体を否定するつもりは全くありません。こういった様々な環境で体を動かして糧を得る経験というのは、やろうと思ってもなかなか出来ることではないですし、見ていて私もやりたくなりました。ただ、こういったリスクが存在している身分なのだということは絶対に認識しておかないとひどい目にあうのだという警告のような気がしました。


もう一つ面白かったのが作業メンバーの鼓舞の仕方。

どんな会社でも失敗プロジェクトというのがあるかと思いますが(たぶん)、このキビ狩り隊も失敗プロジェクト臭が漂っていました。メンバー間のコミュニケーションはほとんど無い上に、上司(作業を指示していた豊)は「ちゃんとやれ」とか文句を言うだけでメンバーの指揮はがた落ち。これじゃあ、余裕のあるプロジェクトだって失敗してしまいます。


これをうまくまとめたのがおじいとおばあ。とにかくメンバーを気遣い、気持ちよく作業してもらうことに専念し、うまくいかなくても責めずに全てを負ってくれたおかげで、メンバー間にこの仕事をやり遂げようと言う空気が作られました。そこからの進捗っぷりはすごいのです。
また、一度この状態になると相乗効果で作業効率が上昇します。私も一度だけこのような状態になったことがありますが、メンバーとしてもこの状態がとても心地よく感じられるのです。無事に終わらせるために必要なことをメンバー全員が考え、検討して実践するのですから、終わらないと思っていた仕事ですら何とかなってしまうこともありえます。
人をやる気にさせる方法っていろいろとあるのだなと感心しました。


いろいろとグダグダ書きましたが、細かいことを抜きにして非常に面白い作品でした。沖縄の魅力や働くことの楽しさ、辛さ。他人との交流。さまざまな視点で楽しめる作品です。


人間、生きてればいろいろありますよね。そんな辛いときに立ち止まるのはとても勇気が要るけども、少し止まって深呼吸してみるのも悪くないのかも知れません。そんな深呼吸できる場所を知っている人は知らない人よりも楽しく生きられる...そんな気がしました。私にとって深呼吸できる場所ってのはどこだろうなぁ...。


何は置いておいても長澤まさみがかわいかったです。それだけでも見る価値あります。