誰もが認める美人OLが惨殺された。この不可解な殺人事件を巡って、ひとりの女に疑惑の目が集まる。同期入社の地味な女性・城野美姫。テレビのワイドショー取材により、美姫の同僚・同級生・家族・故郷の人々がさまざまなうわさを語り始める。過熱するテレビ報道、炎上するネット、うわさがうわさを呼ぶ口コミの恐怖。果たして彼女は残忍な魔女なのか、それとも――。
『白ゆき姫殺人事件』作品情報 | cinemacafe.net
田舎町で起きたある殺人事件で状況証拠から犯人と推測された女性がテレビやSNSで祭り上げられて本人不在のまま犯人として扱われるようになる過程を描いた作品ですが、いままさにこの瞬間の時代の空気をうまく作品の中に収めていてその点はとてもよいなと感じました。
インターネットのよい点は「誰でもすぐに情報にアクセスできるし発信もできる」という点にあると思いますが、ここ最近のインターネット上で起きたアレコレ*1を鑑みると、誰でも発信できるということは決してよいことではないような気がします。
この作品ではそういったインターネットの功罪の「罪過の部分」にもしっかりと光をあてていて、相手を目の前にしていないコミュニケーションであるがゆえに現実では絶対に言えないような無配慮な発言や下世話な勘繰りを平気でしてしまう人たちの存在や、そういった心無い人たちの言葉や行動もおのずと相手に届いてしまうことの怖さがうまく描かれていたように感じました。
さらにそういったネット上での人々の行動の軽率さに対する非難と合わせて、テレビ局をはじめとしたマスコミに対する批判も同じように描いています。
ただの参考人をまるで犯人のように扱ったり、関わる人たちの属性をことさら強調して事件をおもしろおかしく取り上げることで視聴率を稼ごうというあざとさが、結果として罪のない人を追いつめるほう助をしていることをつよく非難しているようでした。逮捕されてもいない人や有罪判決を受けていない人を状況証拠だけで犯罪者として扱うことは本来あってはならないことだと思うのですが、有罪率が99%と極端に高い日本においては*2逮捕イコール有罪という認識はわりと一般的だったりします。
そんな逮捕されてもいない人が犯人として扱われることの異常さを、人の記憶のあいまいさや野次馬根性、ゴシップ好きで残酷な一面などをうまくトッピングして演出していてうまくまとめているなと感心しました。
そんなわけで途中まではわりと楽しく観ていたのですが、ラスト間際でとつぜん話をきれいにまとめてしまいその結果グッと失速してしまったようにも感じられましてその点はちょっと残念でした。せっかくあそこまで人の嫌な部分を露呈してきたわけですから、最後まで心の深淵に踏み込むような話を展開してくれたらよかったのになと思いました。
@TOHOシネマズ宇都宮で鑑賞
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