「夏から夏へ」読んだよ

夏から夏へ (集英社文庫)

夏から夏へ (集英社文庫)

速く走るだけでは世界を相手に戦えない。リレーでは、速く確実なバトンつなぎも重要だ。2007年世界陸上大阪大会でアジア新記録を樹立。08年北京五輪のメダルにすべてを賭ける日本代表チームに密着した、著者初のノンフィクション。酷暑のスタジアム、選手達の故郷、沖縄合宿へと取材は続く。大阪と北京、 2つの夏の感動がよみがえる!2大会のアンカー走者・朝原宣治との文庫オリジナル対談つき。

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小説かと思って読んだらノンフィクションだったのでびっくりしたのですが、この手の本は普段あまり読まないのでなかなか新鮮で面白かったです。


小学校の頃って足の速い子が大抵モテてたなーという記憶があります。
デブで足が遅かったわたしは、足が速いというただそれだけで価値のあることだと感じていたわけでして足の速い人がとてもうらやましかったです。それと絵を描くのがうまい人もうらやましくて、「足が速い」「絵がうまい」人には劣等感と憧れの混じった感情で視線を送っていました。


わたしの個人的な感情はさておいて、学校でトップクラスに足の速い子は必然的に地区の学校対抗の100m走や400mリレーに選ばれるわけでして、この協議がまたものすごく盛り上がるんですよね。それぞれの学校で一番足の速い子たちが一堂に会してその速さを競うという分かりやすさから、自分たちの学校の代表に気持ちを投影せずにはいられないので始まる直前はもう大騒ぎ。
結局自分とはくらべものにならないくらい足の速かった友達でさえ他校の中では一番になれなかったりすると、「世の中には足の速い人がいるんだな...」と驚きと悔しさが混じったような感情がわいてきたことを思い出します。


きっとそれぞれの学校で一番足の速かった子が地区の中で一番になれなかったことで一番足が速くなることをあきらめて、地区の中で一番になった子も県の中で一番になれなくて脱落する。そうやってあちこちの一番の上に立っているのがこの本で紹介されていた人たちであり、その人たちの上には世界のトップアスリートがまだまだ君臨しているんですよね。
走るということは足腰が悪くなければ誰でも出来ることだからこそ、その中で一番になることがどれだけ困難なことなのか分かるし、その一番にみなが憧れてしまうんですよね。
そういう多くの人の憧れの存在であるトップランナーの考えや気持ちが主観的/客観的に丁寧に書きつづられているとてもよい本でした。
読んでると走りたくなります。