非属の才能

非属の才能 (光文社新書)

非属の才能 (光文社新書)

社会の一員として過ごそうと思う限り、どこか何かの組織・集団に属さずに生きていくことは非常に困難です。逆に言えば、会社や地域社会といった何かの集団に属していれば、一人で居るよりも生きやすくなるのです。つまり特別な力を持たない個人同士で群れたり、大樹の陰に寄るというのは生きるための知恵であるとも言えます。


さて。本書では安易に集団に属してその空気に与することで各人が持っている大事な個性が失われてしまうことを危惧し、それに対して警鐘を鳴らし続けます。集団の中で空気を読むことは決して良い事ではなくて、周囲の空気がどうであれ、自らの可能性を信じて信念を貫く事の大事さを徹底して説いています。空気を読んで周囲に迎合する行為は個性を取り払い、皆を同じ形に押さえ込むことに等しいのだという主張はなるほどと感心しました。
# ただ、実際に子育てしていく上でこれを実践していこうと考えると、個性を伸ばす事と躾の両立の難しさを感じます。


また、皆が個性を失う事の不利益はその個人だけに留まらず、その個人が所属する組織に異分子がいなくなることで結果として組織の成長・変革も阻害されるというのは面白いストーリーだと感じました。集団の中で空気が読めなくて邪魔者扱いされている異分子ほど、組織に変化をもたらす大事な存在だというのは、他者と違う行為をする事に不安を感じてしまう私にとっては非常に嬉しい内容でした。


最後に本書を読んで最も勇気付けられたのは失敗学の研究をされている畑村さんの発言を引用した以下の一文をここに引用したいと思います。

「新しいことにチャレンジすれば、結果は必ず"失敗"である」


144ページから抜粋

成功を目指して努力を続けるのは当然として、だからといって失敗することが悪いことじゃない。失敗を積み重ねていくとそれは成功への礎になるんだというのは非常に心奮い立つ一文でした。


自らの好きを信じて失敗を積み重ねる勇気を持つこと。これを今年の目標にします。
極論っぽい論調や非属という言葉に抵抗を感じましたが、それを差し引いても得るものが多い一冊でした。