プロ交渉人 - 世界は「交渉」で動く

プロ交渉人―世界は「交渉」で動く (集英社新書 419B

プロ交渉人―世界は「交渉」で動く (集英社新書 419B

とくダネ!のコメンテーターとしてよく出演されていた諸星さんの著書。諸星さんが大学の先生だと言うのは知っていましたが、交渉代理人をされているというのにはすごく驚きました。人と人の利害を調整する交渉人ってすごくかっこいいと思いますし、憧れてしまいます。


私は他人との交渉がすごく苦手。相手に譲歩を求める行為にすごく罪悪感を感じてしまうのです。もちろん仕事であればそんな気後れなんてしている場合ではないのでそこは割り切れるのですが、例えばプライベートで大きな買い物をした時に値切ったりなんてのはもう大の苦手です。だから大きな買い物(特に家電製品や車とか値切るの前提で値がつけられているような製品)はすごく楽しみな反面、買う時の事を考えるとすごく憂鬱になります。ま、結局安く買いたいので頑張って値切りはしますが、買い物が終わった時にはいつもヘロヘロです


基本的には買う側に有利な交渉ですらこの調子ですから、互いに同じ立場かもしくは相手の方が有利な立場での交渉を行う諸星さんのような人はまさに雲の上の人です。そんな天上人が教えてくれる交渉の秘訣も簡単には真似出来ない(一見出来そうで難しい)。


本書の一番の魅力はオリンピックやワールドカップといった多くの人間の利害に絡む難しい案件の交渉の裏話が読めることです。交渉のプロ達が集い、様々な方法や人脈を利用して自らの要求が通るように水面下で準備を進めていく様子はとても面白いです。
大きな意思決定を動かすのは力を持った人々であり、その権力者を動かすのは交渉であると。つまり交渉なくして大きな事案を動かす事は出来ないのだと諸星さんは書かれています。

実体験に基づいているために文章にも説得力があるし、何より誰もが知っているイベントの話などが舞台になっているのでリアリティもあります。今年読んだ新書では一番楽しく読めました。