- 作者: 百田尚樹
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2012/04/12
- メディア: 文庫
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田舎町で瀟洒なレストランを経営し、町中の男を虜にする絶世の美女・未帆。彼女の顔はかつて畸形的なまでに醜かった。周囲からバケモノ呼ばわりされ友達もできない悲惨な日々。そして思い悩んだ末、ある事件を起こしてしまう。追われるように移り住んだ「美女の街」東京。そこで整形手術に目覚めた未帆は、手術を繰り返して完璧な美人に変身を遂げる。そのとき、甦ってきたのは、かつて自分を虐げた町に住むひとりの男に対する、狂おしいまでの情念だった―。
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異性に求めるのは「見た目」かそれとも「中身」かというのは、もはや聞き飽きた/聞かれ飽きたくらいありふれた問いなのですが、ぶっちゃけて言えばどっちも大事なんですよね。要はバランスが大事なのであって、「見た目」か「中身」のどちらかがどれだけすばらしくても、もう一方が最悪だったらそれはもうダメなんですよね...。
ただ相対的にどちらを重視するのか?というところまで問いをかみ砕いて考えると、わたしは「見た目」を求めるのかなと思います。
ではなぜ「見た目」を重視するのかその理由について考えてみたのですが、要因は2つあるような気がします。
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- 劣等感の裏返し
- 見た目はリトマス紙
劣等感の裏返し
小学生の頃、たいへん太っていた時期がありまして今よりも身長が30センチほど低かったのに体重はほとんど今と変わりませんでした。当時はそんな太っている自分のことが嫌で嫌でしょうがなかったですし、醜い顔や体をしていることが本当に恥ずかしくてしょうがありませんでした。
そんな黒歴史的な時代があったからなのか分かりませんが、「見た目の大事さ」へのこだわりはとても強く、もはや強迫観念といっても差し支えないくらいにこだわっています。これは劣等感の裏返しかなと言う気がしています。
見た目はリトマス紙
気が合うか合わないかというのは、その相手の見た目の好き嫌いと概ね比例関係にあるというのがわたしの持論です。
その人を好きになれるかどうかは、その人の中身・性格がどうだということよりも、見た目を好きになれるかどうかに大きく依存するような気がしています。
つまり、自分が仲良くなれる人なのかどうかを判定するためのリトマス紙的な役割を担っているとも言えます。
さて。前置きが長くなりましたが、本書は圧倒的にブサイクな女性が整形を重ねて理想の容姿を手に入れたことをきっかけに昔好きだった男を振り向かせることを願うようになり、田舎に戻ってお店を開いて彼との偶然の出会を待ち構えるという、ピュアなんだか下世話なんだかよくわからないお話でしたがたいへんおもしろかったです。
あまりに醜い外見が原因で長く迫害されてきた女性が、普通の容姿にあこがれ、そしてそれが叶うとさらに普通以上の容姿を求め出すところは人の欲望の際限なさが伝わってきてよかったです。
「やっぱり人は見た目だよね」と思わされつつ、それだけじゃダメなんだなとも思わされたのでした。ひとつのもので満足できるほど人の欲は浅くないのである。