「初恋」見たよ

初恋 [DVD]

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音信不通だった兄から手渡されたマッチに書かれている店、ジャズ喫茶Bへと立ち寄った高校生のみすず。店内には兄を含め6人の若者がいた。冷たく突き放す岸にみすずは言い放つ。「大人になんかなりたくない」。そして1968年12月10日……。

初恋 (2006年の映画) - Wikipedia

わたしの10代の頃を振り返ってみると、自分がいま考えていることは誰の影響も受けていない自分オリジナルのものなんだというよくわからない自負をもっていたことを思い出します。「他人とは違う自分」に何か憧れを抱いていたのだと思いますが、あれから10年くらい経った今、あらためてその当時を振り返ってみるといかに自分の考えが凡庸なものであったのかをあらわすエピソードがたくさん出てくるのですが、ここに書くのも恥ずかしいことばかりなのでとりあえずわたしという人間はその程度だったという事実だけをここに書き記しておこうと思います。


世の中にいる10代すべてが「自分は特別」と考えて生きているわけではないでしょうが、それでも本人が想像/覚悟している以上に時代の空気に流されて生きているんだということにいずれ向き合うことになると思います。どんなに懸命に考え抜いて自らの意思で決定したことだと思っていたとしても、単に時勢が色濃く反映されただけのものであることはめずらしくないのです。
昔「どんな人*1も時代は超えられない」という言葉をどこかで読んだことがあるのですが、この意図するところは、どれほど優秀な人であっても結局は生まれ育った時代/年代というフレームワークの中にはまってしまう程度の違いしかないんだということなのかも知れません。


本作の登場人物は自分は自分の意思で人生を選び取っていると思っているような人が多く出てくるのですが、そういう人ほど時代の流れに振り回されてしまい、場合によっては悲惨な末路をたどってしまいます。そんな物悲しい風景がとても印象的な作品でした。


この作品を観て改めて実感したのは、恵まれない家庭に育った少女を演じている宮崎あおいから放たれる魅力は言葉では形容しつくせないほどすばらしいということです。体中から発せられる不幸オーラっていうんですかね。あの鬱々とした表情とか、心の中にどす黒い感情が渦巻いてそうな視線とか、彼女だからこそ出せるダークな雰囲気がにじみ出ていることに感心させられます。
最近は彼女もポップな役を演じることが増えてきたのですが、この作品の冒頭のような存在感ある役を演じている方がわたしにはとても魅力的に映ります。ひさしぶりに「害虫」を観てみようかなという気になりました。
また、そんなダークサイドに堕ちていた彼女が恋をすることで徐々にかわいらしく変貌をとげていく様子もすばらしくて必見です。


公式サイトはこちら

*1:実際にはどんな英雄も...という言い回しだったような気もするのですが、ネットで探しても見つかりませんでした