スーパーコンピュータを20万円で創る

スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書)

スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書)

必要は発明の母とはよくいったもので、追い詰められて初めて出来る事というのが往々にしてあります。本書は正にこの言葉を地で行く話でして、天文物理学を本職としている人たちがどうしても計算したい処理を行うために手作りでスパコンを作ってしまったと言うそんなお話です。


××の計算(シミュレーション)がしたい!!と思ったときに、それを計算するプログラムは作れても(その正当性はともかく)、それを計算するためのコンピュータを作ることは容易ではありません。そもそも素人に作れるの?というのが私の率直な感想です。計算するプログラムすら作るのに四苦八苦していた私からしてみたら、インフラともいえるハードウェアを作るなんてのは本当に夢物語のようなお話ですし、何から手を付けていいのかすら全く想像が出来ません。まさに想像力欠如です。


そんな私の体たらくはいいとして、本書の素晴らしいところは物理を知らない人にもわかる様に、

    1. 計算したいものは何なのかを説明し
    2. 具体的にどのような処理なのかを説明し
    3. それを計算するために必要なコンピュータをどのように設計して作成したのかを説明している


と言う点がしっかりと抑えられている点にあります。とにかく読み進める上で必要な情報は全てわかりやすく説明されているので途中で読み戻す箇所が全くと言っていいほどありません。読み終えてみて、その読みやすい構成には非常に感心しました。


本当に欲しいものを手に入れたいと願った時に、それが容易に手に入らないとわかったらこうやって自ら手を動かして欲しいものを創り上げられるようなスキルは身に付けておきたいと思わせられる作品でした。