天然コケッコー


主人公・そよ(夏帆)が通う全校生徒たった6人の分校に、ある日、東京からかっこいい転校生・大沢君(岡田将生)がやってくる。初めての同級生、初めての同年代の異性に緊張するそよ…。同名人気コミックの映画化。2人の初恋が生まれるまでの甘酸っぱいドキドキを、家族、友達、村の人、そして山や海や四季の自然が優しく見守るラブストーリー。

『天然コケッコー』作品情報 | cinemacafe.net

MOVIX宇都宮にて。


平坦なストーリーととても美しい風景。完全にど真ん中直球ストライクでした。この作品大好きです。
ストーリーにはほぼ抑揚がありません。日常を日常としてあるがままに描いています。その代わり出てくる風景のどれもがとにかく美しくてすばらしいのです。四季それぞれに違う表情を見せる田舎の風景を本当にあるがままに映し出しています。


その中でもすごく好きなのが

    1. 大沢がそよと二人きりになりたかったと言った小さなトンネルのシーン
    2. 学生服のボタンが曲がっていると直しているシーン

この2つ。時期的には1.の前後のシーンはどれも夏らしくて大好きです。


そういえば、出演者は結構豪華なキャストだったのですが、私はその中でもさっちゃんがとてもかわいくてよかったです。
トイレに行きたいと言えずお漏らししたり我慢しすぎて膀胱炎になっちゃったりするその内気なところとか、大好きなそよに向ける笑顔とか、子どもらしいかわいさが溢れててすごく魅力的でした。別に子ども好きというわけではないけど、こういうかわいらしさって子どもとか小動物特有のものだと思うし、それを自然に感じさせる演技というか立ち振る舞いはとてもよかったです。何となく自分の子どもを見ているようでした。


それとそよもすごくよかったな。
例えば自分のことをワシとか言っちゃうところなんて田舎娘マニアにはきっと堪りません。いや、私は違いますよ。マニアじゃないです。ちょっとマニアの気持ちが分かる程度なのですが、そんな私から見てもあのかわいさ+訛りっていうのはすごい威力を感じます。
それにちょっと口が過ぎたせいで友達とケンかをしてしまい落ち込んでしまったりするあたりなんて、妙に親近感が溢れててとても微笑ましい感じでした。


書いてて思い出したのですが、出演者の中で異彩を放っていたのがシゲちゃん。郵便局に勤めていてそよに想いを寄せているようなのですが、これがまた見たことないくらい気持ちが悪いのです。この人が出ているシーンだけはどうしてもスクリーンを直視出来ませんでした。どういった意図で出てきたのか分かりませんが、個人的には居ない方が良かった(作品の印象には合わなかった)ような気がします。ですが、田舎が持っている言いようの無い不気味さの象徴しているようでもあるので、そこは案外深いのかなと考えたりしました。


そうだそうだ。
ストーリーの中で一つだけ気になったのがあったのですが、そよの父親の浮気疑惑だけが宙ぶらりんというか結論が出なかったのがとても心残りかな。きっと原作では補足なり結論なりが出ているんだろうけど、映画の中ではただその事実だけが提示されてて何となく悶々としています。そういう意味では原作を読んだ上で見た方が、ストーリーの抜けを埋めやすくていいのかも知れません。機会があれば原作を読んでみようと思いました。


そよが中学を卒業する間際になり、大沢が東京の高校に通うかも知れないと思ったとき、ふとこんな言葉を口にします。


「もうすぐ消えてなくなるかも知れんとおもやあ、ささいなことが急に輝いて見えてきてしまう」


身近にあり過ぎてそれが無くなってしまう事を考えたことも無いようなものって誰しも持っていると思います。今居る居場所(会社や学校)だって、住んでる場所や友達だって居なくなると思うと途端にその大事さが見えてきます。
でもそうやって失いそうになった時に輝いて見えるものが手元にある人は幸せなのかも知れないと思うのです。失うものが無いというのは強みでもありますが、弱みでもあると思います。無くなったら寂しいと思えるようなものを手にしているかどうかって自分が今幸せかどうかのバロメータなりうるんじゃないかと。
今、大沢と離れたくない。そんな想いをもてたそよは人生を楽しく歩んでいるのだろうし、その寂しいんだという気持ちをちゃんと相手に伝えられる強さというか思い切りの良さってすごくいいなと思います。


何だか、そういうまっすぐな人生って私から見たらすごくまぶしいなと感じてしまいます。


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