「ソロモンの偽証 前篇・事件」/「ソロモンの偽証 後篇・裁判」見たよ

わたしの大好きな作品である「八日目の蝉」の監督でもある成島出監督の最新作ということで楽しみにしていました。成島監督への複雑な想いは改めて語るとして、まずは前・後編それぞれの感想を簡単にまとめます。


ちなみに原作未読です。

前篇・事件の感想


クリスマスの朝、雪に埋もれた校庭で見つかったある男子生徒の遺体。警察は自殺と断定するが、“殺人”の目撃者を名乗る告発状が学校に届く。告発されたのは彼のクラスメイト。マスコミ報道が過熱する中、あまりにも無力な学校と親。もう大人たちに任せておけないと、生徒たちは学校内裁判を開廷することに――。

『ソロモンの偽証 前篇・事件』作品情報 | cinemacafe.net

クラスメイトが自殺をしたことに端を発してトラブルが雪だるま式に大きくなっていき、それにたくさんの人が振り回される様子を描いたのが前篇。

なぜクラスメイトは死んでしまったのか、本当に自殺だったのか他殺だったのか、他殺ならだれが殺したのか。

さまざまな謎とさまざまな人たちの想いが交錯する中、そんな状況に自分たちで決着をつけようと生徒たちが自らで裁判を行って真実を見つけることを決意し、大人たちの抵抗を振り切って実現にこぎつけたところで後篇へとつながることになります。


前篇は基本的に後篇への前振りがメインなわけですから後篇に向けて大風呂敷が広げられることになりますし、そうなると作品のあちこちに「あれはどうなるんだろう」という気になる部分がたくさん出てくるために観ていて非常におもしろかったです。キャストの方々の演技もすごく自然で違和感はまったくなかったし、中学校のときに吸ってた空気がまさにここに再現されていたように感じました。

いいことも悪いことも全部思い出しちゃいましたね...。


後篇・裁判の感想


前代未聞の“こども”による“こども”だけの校内裁判、遂に開廷。被告は、告発状によってクラスメート殺害の嫌疑がかけられた問題児。校内裁判の提案者である藤野涼子は検事として、彼の有罪を立証しようとする。対するは、他校生ながら裁判に参加する神原和彦。さまざまな思惑が絡み合う中、真相を究明しようと彼らは必死に奔走する。そして、裁判は思いもよらぬ人物の【偽証】で幕を閉じる。偽証の果てに、彼らが見たものとは―。

『ソロモンの偽証 後篇・裁判』作品情報 | cinemacafe.net

後篇は前篇で提示されたすべての「?」を解きほぐすべく、裁判をとおしてひとつひとつの謎が明確になっていきます。

いままではっきりしなかったことがはっきりすること自体はとてもうれしいというか、観ていてすごく気持ちいいと感じたのですが、一方でその内容自体には釈然としないものが残りました。これだけたくさんの人を傍聴のために集めておいて、たどり着いた結末はそれかーという落胆。

もちろん原作ありきなので映画に罪はないことはわかるし、もっと積極的にこの展開になった意図を汲みとるとすれば、この視野の狭さこそが中学生のリアルな限界なんだという主張にも受け止められました。

でもわたしはこの、裁判が始まってからの展開に着いてはほとんどおもしろいとは思えませんでしたし、意図がどうであれ、つまらなかったと感じました。


ちなみに唯一わたしが好きだったのは弁護人として参加していた神原くんが被告人の大出くんをなぜか問い詰めるシーンでした。

優秀で被告からの信頼も得始めていた弁護人が、とつじょ大出くんに自らの悪行を問い質し、その突然の変貌に大出くんが追いつめられていくのですがここのシークエンスがもう緊張感いっぱいで観ていてピリピリが伝わってきたし、直前までまったく予想していなかった展開に興奮し過ぎて思わずニヤッと笑ってしまいました。


話を本作の感想に戻して、結論を書くと後篇はちょっとおもしろくはなかったです。
学校で裁判をしているという臨場感を大事にし過ぎるがゆえに、演出がちょっと面白味に欠けるなと印象を受けました。


後篇は前篇で広げ過ぎた風呂敷をたたむフェーズになったわけですから、しょうがないんですけどね...。


まとめ


最初に「成島監督は大好きな八日目の蝉を撮った監督だ」と書いたのですが、これ以外の作品もわりとわたしにはなかなか印象深い作品ばかりでしていつもその何とも言いがたい内容に戸惑いを隠せません。

映画を観始めてまもなかったわたしに"予告を観て期待し過ぎると痛い目にあうぞ"ということを教えてくれた「ミッドナイト イーグル」と制服を着たままの北乃きいにさんざんハイキックをさせてパンチラさせた上にラストで男子と全力で殴り合いをさせるという「ラブ・ファイト」はわたしの映画史に残る2大困惑作品です。

あとは「孤高のメス」はいい話過ぎるもののおもしろかったですが、「草原の椅子」は大好きな宮本輝作品の映像化でしたがあまりにディザスターでほとんど記憶がありません。この作品のことを思い出そうとすると頭が割れそうなくらい痛いです...(言い過ぎ)。

そんなわけであと数年で不惑を迎えるわたしも成島監督の作品には惑わされっぱなしでして、あまりの当たりハズレの大きさに毎度観ようかどうか悩むレベルです。そんな中にあって今作の出来はどちらかというと当たりの部類だと思いますし、とくに前編はかなりおもしろかったです。

ただ、後篇の尻すぼみ感はちょっとひどいのでもうちょっとうまいこと終わらせて欲しかったなと思います。





@MOVIX宇都宮で鑑賞



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