チャーリーは、小説家志望の16歳。入学初日にスクールカースト最下層に位置付けられた高校では、ひっそりと息を潜めてやり過ごすことに注力していた。ところが、そんな彼の生活は、周囲の学生たちとは関係のない“特別席”で、眩しいほどに輝いていた、陽気でクレイジーなパトリック、美しく奔放なサム兄妹との出逢いにより、一変する。初めて知る“友情”、そして“恋”。世界は無限に広がっていくように思えた。だが、チャーリーがひた隠しにする、過去のある事件をきっかけに、彼らの青春の日々は思わぬ方向へと転がり始める――。
『ウォールフラワー』作品情報 | cinemacafe.net
働きだして今年でもう12年になりますが、この12年でもっとも退化したのは「新しい環境になじむスキル」だと思います。
もともと人見知りなので新しい環境になじむことは得意だったことなんてないのですが、それでも学生であれば3年*1ないし4年*2おきに強制的にいままでとは別の環境に放り込まれるわけですから、いやでもその環境になじまなければなりません。
ところが一度働き出すと、転職、異動をすることがなければ「新しい環境に身を置くこと」はめったになくなるわけでして、異動もほとんどないわたしはもうこの12年はほぼ同じ環境でぬくぬくと過ごしています。やりたいことも少しずつ見えてきたし環境を積極的に変えていかなきゃいけないなというのはわかっているのですが、つい慣れた場所の住みやすさに甘えてしまいます。
本作は入学した高校で友だちにめぐまれず一人で生きていくことを選ぼうとしていた男の子が、ある兄妹と出会って日々を大きく変えていくというお話でしたが、わたし自身が送った高校生活と似ている部分やこうだったらよかったのになとあこがれる部分のたくさんつまったよい作品でした。
高校に入学して「さあ友だちを作って楽しい生活を送るぞ!」と勢い込んでみたもののやはり友だちなんて出来なくて、「自分にはそういうのはやっぱり無理なのか...」と落ち込んでしまうところには既視感をおぼえたし、観ながら「少しの偶然とちょっとの勇気で手に入れた気のおけない友だちと過ごす時間がどれほど楽しいのか」ということについて想いを馳せずにはいられませんでした。
以前なにかのエントリーで書いたことがあるのですが、わたしは高校に入って間もない頃、トイレで学年でいちばんめんどくさそうな野球部のチンピラにからまれたことがあります。トイレに入って少ししたら「おまえ、こっちにらんでただろう」と言われて因縁を付けられたのですが、「はああああ?このハゲなにいってんの?」と坊主頭をピシピシひっぱたきながら強気に言い返して最後はビンタして追い返す妄想をしながら「そんなことないよ」と否定するのが精いっぱいでした。
体格がよくてケンカも慣れてそうな相手に比べてこっちは帰宅部でゲームが得意なだけのただの小太りでしたので、早食いとスト2以外だと勝てる見込みが1nmもありませんでしたね...。あと速読でも勝てたかも。
ぶっちゃけもう殴られるんだろうなとあきらめていたのですが、そんな窮地に割って入って助けてくれた人がおりましてその人は同じクラスにいた人だったのですがその彼のおかげで痛い目に合うことなくその場をやり過ごすことができました。もし高校に入学して間もないあのときに殴られたりしていたらそれだけで高校に行くのが嫌になって登校拒否していたかも知れないし*3、少なくともその相手に対しては苦手意識をもってしまって学校に通うことが楽しくなかったことは想像に難くありません。
そんなふうに助けてくれた彼とはそれからもずっと仲良くしてもらっていて、高校でも大学に入ってからもそしていまでもたまに会って話したりする仲を続けています。
自分にとって高校時代をいい思い出に変えてくれたターニングポイントはあの出来事だと思っているし、そう考えるとわたしと彼の関係というのはチャーリーから見たサム兄妹と似ているようにも思えます。もちろんこの作品で描かれていたような恋愛関係のエピソードはありませんでしたが、暗色でぬりつぶされそうになっていた高校時代にたくさんの色を塗ってくれた人が自分にもいたことを思い出してちょっとうれしくなりました。
そしてこの作品を観終えたときには、ひさしぶりに新しい環境に飛び込んで一から人間関係を組み立ててみたいという気持ちがふたたびむくむくと首をもたげてきました。わたしはもう36歳なので、いくら新しい環境に飛び込んだところでこの作品のような新たなよい仲間ができるなんて思っていませんが、「環境の変化によって自分が変わる」という経験をひさしぶりに味わってみたいとつよく願うようになりました。
宇都宮ヒカリ座で鑑賞
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