「リベンジ・マッチ」見たよ


1980年代に全米を熱狂させた伝説の2人の元ボクサー、“レーザー”ことヘンリー・シャープは、不器用を絵に描いたような寡黙で生真面目な男、いまは造船所で働く独身の労働者。かたや“キッド”ことビリー・マクドネンは、チャラいお調子者のスケベ野郎、今は自動車販売とレストラン経営で大成功。何から何まで対照的なキャラの彼らは、過去に遺恨を残した宿命のライバル同士。かつて対戦したタイトルマッチでは1対1のまま勝負がつかず、世紀決戦を交えるはずだった。30年ぶりに、そんな彼らに再びリングで戦う機会が訪れる。もともとはキワモノ企画だったが、長年の確執が噴き出し小競り合いが滑稽な大乱闘に発展し…。

『リベンジ・マッチ』作品情報 | cinemacafe.net


30年前に伝説的とも言えるほどの人気を博した2人のボクサーが、小遣い欲しさにリベンジマッチをすることになるが...というお話。

2人はリングのうえの争いだけではなくプライベートでもいさかいがあったために、顔を合わせるのも不愉快と言わんばかりにことあるごとにぶつかりあいます。そのケンカの原因のしょうもなさ(ちょっと小突かれたりぶつかった、もしくは態度が気にくわないとかその程度)や、そのしょうもなさとは反比例した本人たちの真剣さのミスマッチに思わず観ながら笑ってしまいます。


そんな彼らが30年前にはつけられなかった決着をつけるために、再度リベンジマッチをする!となるわけですが、これがまたおもしろいくらい盛り上がらないわけです。

もともと二人はものすごい実力のあるボクサーであり全米を熱狂の渦にまきこむほどの人気者だったわけですが、そんな彼らも一線を退いて30年も経てばもはや一般の人と大差ない扱いとなって当然でして、そんな普通の人同士の戦いを観たいという人はまずいないわけです。ボクシングの試合を観て興奮したいのであれば、山のようにいる今まさにピークを迎えている強い選手たちの試合を観た方がよほど見ごたえがあって楽しめることは間違いありません。

いくら当人たちにとっては長年の決着をつける大事な試合であっても、世間から見たら年寄りのじゃれ合いにしか思えないわけですから、よほどのモノ好きでなければ誰も興味なんてもたないんです。


お金が欲しい、成功したい、大勢の前で決着をつけたい。


このリベンジマッチ関わる人それぞれが果たしたい願いはさまざまですが、一致しているのは「誰も観たいなんて思っていないロートル同士の戦いを観たいと思えるように盛り上げていってなんとか大きな会場で開催し、興行として成功させなければならない」ということです。その目的達成のためにいやいや手を取り合ってがんばるわけですが、これがまあおもしろいくらい失敗ばかりなんです。


たしかに同じゴールを目指しているとはいえ、もともとは長年確執があった人たちであるわけですから急に手を取り合おうといってもなかなかすんなりとできるわけではないんですよね。たとえば格闘ゲームにキャラクターとして出ることになった二人はモーションキャプチャーをとるためにスタジオに行くのですが、そこで小競り合いの末にスタジオを破壊するほどのケンカを始めてしまいます。

さらに試合の宣伝でおとずれた総合格闘技の試合場で総合格闘技をバカにしだして観客からブーイングをくらい、あげく選手とも口論しだして最後は殴ってノックダウンさせてしまうのです。


自分たちの仕事を全うできずこれは失敗か...となるのですが、そのダメっぷりが逆にうけて試合への期待はどんどんもりあがっていき、あっという間に大きな会場で試合できることになっていくのです。

とくに二人の子どもみたいなケンカの様子がYou Tubeにアップされて話題(笑い者)になるくだりは現代っぽくておもしろいなと思いました。


そしていよいよラストでは二人がリングで決着をつけることになるわけですが、ここがもうすばらしいんです。

勝負事の勝ち負け、とくにボクシングのような相手と1対1で戦う競技の勝ち負けはそれがすべてといっても過言ではないほど絶対的なものです。日本でも「勝てば官軍」という言葉がありますが、勝たなければ意味がないのです。そのためにはたとえグレーゾーンであってもルールの範囲内であれば徹底的にそれを行使して勝ちに徹するし、それがあるべき姿だとわたしは思います。

相手が弱点を見せたらそこを徹底して叩く。


試合が始まってすぐはぜったいに負けたくないという想いから二人とも勝ちに徹する姿勢を見せるのですが、殴りあって倒されあっているうちにレーザーとキッドはそういう姿勢で決着をつけることに興味を失うのです。ベルトがかかっているわけでもないこの試合で、勝負の勝ち負けを決めるのはレフリーでもなければ観客でもなくてそれは自分たちだと悟ったからなのです。

相手の弱点をついて勝つよりも、お互いに全力を出し合って殴り合うことを選んだ二人が最後まで戦い抜く姿はほんとうにかっこよくて、観ていて思わず涙が出そうになりました。ただのロートルにしか見えなかった二人が最高にかっこよく見えた瞬間でした。


MOVIX宇都宮で鑑賞



公式サイトはこちら