「鑑定士と顔のない依頼人」見たよ

物語の始まりは、ある鑑定依頼。引き受けたのは、天才鑑定士にして一流オークショニア、ヴァージル・オールドマン。それは、資産家の両親が遺した絵画や家具を査定してほしいという、ごくありふれた依頼のはずだった。ところが、依頼人の女性は決して姿を現さない。やがて、彼女が屋敷の壁の向こうの隠し部屋にいることを突き止めたヴァージルは、我慢できずに彼女の姿を覗き見、その美しい姿に一瞬で心奪われ、どうしようもなく惹かれていく。さらに、美術品の中に、歴史的発見となるようなとんでもなく価値のある美術品の一部を見つけ…。

『鑑定士と顔のない依頼人』作品情報 | cinemacafe.net


(注意) 作品の結末にちょっとだけ触れている部分もあるので未見の方はご注意ください


ある女性から遺産として残された家財の鑑定を頼まれた鑑定士が、謎めいた行動を繰り返すその女性に徐々にのめりこんでいく様子を描いた作品でしたがこれがもうすごかったです...。正直観てしまったことを後悔したというか、物語の結末というか着地点が見えたあたりでもういたたまれなくてなってまともに観ていられませんでした。

ここ最近観た作品の中では断トツで破壊力のある作品でした。

冒頭、やたら潔癖症かつ完璧主義者で他人に心をゆるすことなくとりつくしまがないように見えた鑑定士のヴァージル。
ヴァージルは鑑定士として多くの美術品を見ているうえに、たくさんの美術品を取り扱うオークショニアとしても活躍していたために、どんな美術品でも瞬時にその真贋を見極めることができる一流の仕事人だったわけですが、そんな優れた眼をもつ鑑定士も人の心の真偽までは見抜けなかったわけです。

もしくは不慣れな恋心がその眼を曇らせたとみるべきなのかも知れませんが、対象を微に入り細を穿つように観察してその真偽を見ぬくことを生業にしてきた人があっさりとだまされてしまい、自分が一番大事にしていたものを根こそぎ奪われてしまう様子には戦慄をおぼえました。

どんなに嘘を見抜けるすごい人だってだまされるときはだまされるものなんだなという当たり前のことにいまさら思い至りました。
こんなに疑り深い人でもだまされるわけですからふつうの人なんてもっと簡単にだまされるんだろうし、そう考えるとオレオレ詐欺とか無くならないのも当然ですよね。


ラスト間際のあのシーンの脱力感はいままで観た映画の中でも屈指の破壊力でして、あのシーンを観られただけでもこの作品を観てよかったなと思いました。いやほんとはこんなシーン観たくなかったのですが、でも他では味わえないほどの脱力感を味わうことができたという点では観てよかったなと。

ほんとすごかった...。


@宇都宮ヒカリ座で鑑賞


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