「大統領の料理人」見たよ


片田舎で小さなレストランを営むオルタンス・ラボリがスカウトを受け、連れて来られた新しい勤務先はエリゼ宮。そこはなんとフランス大統領官邸のプライベートキッチンだった。彼女が作り出すのは“おいしい”の本当の意味を追求した料理の数々。当初は値踏みするような目で遠巻きに眺めていた同僚たちも、いつしか彼女の料理の腕前に刺激され、冷たくお堅い官邸の厨房に少しずつ新風が吹き始める。彼女の豪快な手腕と笑顔に巻き込まれ、大統領のお皿に食べ残しがなくなってきたある日、彼女に直接声をかけてきたミッテランの口から意外な話が飛び出す――。

『大統領の料理人』作品情報 | cinemacafe.net


宇都宮ヒカリ座で観てきました。


わたしは新卒でいまの会社に入って転職することなくずっと働いているのですが、数えてみると今年の4月で入社して丸12年が経つことになります。学生生活でいままで一番長く在籍したのは小学校と大学(+大学院)の6年ですので、その2つを足したくらいの長い間同じ組織に所属して過ごしていることになります。辞めて他の場所に行こうかと考えたこともありますが、なんだかんだで離れることなくここまできてしまいました。


そんなわたしも、最近仕事ですごく悩んでいることがあります。


それはいまいる場所が居心地がよすぎるということです。


なんてことを書くと「居心地がいいならいいじゃないか」と言われそうですし、わたしもずっとそんなふうに思っていました。
でもふと自分の日常や今後について考えてみたときに、居心地のいい場所にいることが本当にいいことなのかどうか疑問に思うようになったのです。



本作は大統領専属の料理人として雇われることになった女性料理人の姿を描いた作品ですが、自らの力を認めてもらい全力を尽くせる場所で働けることのよろこびと、そういった恵まれた環境を維持・継続していくことのむずかしさが伝わってくるよい作品でした。

組織やコミュニティというのは、たとえいまが自分にとって利のある魅力的な存在であっても参加する人たちが変わればその姿を容易に変えてしまいます。この作品でオルタンスは自らの力をふるう場としてエリゼ宮を与えられ、そして見事に大統領の心をつかむようになります。彼女が作りたい料理を作り、そして大統領はそれを食して喜ぶ。そんな両者にとって幸せな関係が築かれていき、彼女にとって夢のような職場環境が組み立てられていきます。

まさにこのときの彼女は、いまのわたしが感じていたような「居心地のよさ」を感じていたはずです。


ところが、官邸はスタッフの入れ替わりが激しいために大統領以外のスタッフが徐々に変わっていく中で彼女が力をふるうことを阻害する要因がつぎつぎと出てきます。


材料にケチを付けるひと、調理法や味付けに文句をいう人、やり方を変えようとする人。


いつの間にかオルタンスは自分の力を発揮できない環境に押し込められてしまいます。


もし自分がオルタンスだったらどうするのか?

たぶんあきらめて与えられたやり方になじもうとするか、もしくは少しでも自分のやり方をとおそうと努力するか。わたしは面倒なことが嫌いな怠け者なのでおそらく前者になるんじゃないかと思うのですが、オルタンスが選んだのはそのどちらでもなく仕事を辞めて別のよい場所を求めたのです。


当たり前のことですが、職場にかぎらず組織やコミュニティというのは参加する人によって姿が変わります。

そう考えるといくら居心地がよい場所でもいつかは居心地がよくなくなります。
でもいま居心地がいいと、いつまでもそこにいたいと思うようになってその場所に執着するようになってしまい、結果として居心地がよくなくなってもいつまでもそこにい続けようとしてしまいます。

だから同じ場所に居続けようとするのではなく、つねに自分に最適な居場所を探してそこに身を置くほうが理にかなってるんだなということをあらためて実感しました。合わない仕事に妥協しながら人間関係が硬直している組織やコミュニティにしがみつくよりも、いまじぶんが一番求められている場所を求めて移り住んでいく方が生き方としては自然なんじゃないかなと思うし、居心地の良さにかまけて本当に自分がやりたいこと、やらなければいけないことと向き合わずにいまいる場所にしがみつくなんてことはしないようにしたいです。


でも居心地のよい場所ってつい執着してしまいがちですよね...。


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