「キャリー(クロエちゃんの方)」見たよ


内気な高校生・キャリー(クロエ・グレース・モレッツ)と、彼女を厳格に育てる狂信的な母(ジュリアン・ムーア)、そして彼女を疎外する高校の同級生たちをめぐる青春サイコ・サスペンス。1976年にブライアン・デ・パルマ監督によって映画化されたスティーブン・キング原作の小説を再映画化。

『キャリー(2013)』作品情報 | cinemacafe.net


(注意) 本エントリーはネタバレというほどではありませんが作品の結末に触れている部分があるので未見の方はご注意ください。


TOHOシネマズ宇都宮で観てきました。

本作は40年近く前に公開されたたいへん有名な作品のリメイクですが、オリジナルの方は2年前に午前十時の映画祭で鑑賞しました。
正直そのときはあらすじも何も知らないどころか、ホラーであることすら分からず劇場に足を運んだのですが、冒頭からのつかみどころないながらもどこか不穏さを漂わせつつ進む物語にグッと惹きつけられてしまい、途中からキャリーのおかれている境遇の不憫さに耐えきれずずっと号泣しながら観てしまうほどのめりこんでしまいました。


そんなわけでオリジナルの方は過去に観たホラー映画の中でも間違いなくトップ3に入るくらい大好きな作品ですが、なんとこの作品がこれまた大好きなクロエちゃん主演でリメイクされるということでずっと公開を楽しみにしていました。そして公開初日となる本日のレイトに駆け込んで観てきました。


まず全体的な印象としてはオリジナルの流れをきれいに踏襲しつつ、オリジナルでは説明が足りなかった部分や演出があっさりとしていた部分に補足が加えられていました。オリジナルが醸し出していた空気感はそのまま残しつつ、細部に分かりやすくなるようなアレンジが付け足されていたなというのが本作の印象でしたが、個人的にはそのアレンジが蛇足のように感じられてしまいました。


中でももっとも違和感をおぼえたのはプロム以降のシーン。

たとえばプロムでベストカップルに選ばれたキャリーがうれしそうにステージにのぼり幸せの絶頂に達したその瞬間、キャリーの頭上にイタズラで仕掛けられた豚の血がぶちまけられます。このシーン自体はオリジナルに大変忠実なのですが、その血がかかる瞬間が3回やや角度を変えながら映し出されるのですが、その何回も血をかけられる様子がなんかコントみたいなんですよね。

よくバラエティ番組でもおもしろいシーンを何度も繰り返して流すことがあるじゃないですか。まさにあれみたいなんですよ。

キャリーが幸せのピークから不幸のどん底へとスイッチがぱちりと切り替わるように突き落とされる一番緊張するシーンなのにこんなふざけた演出だった時点でかなりイラッとしました。
さらにその直後。この出来事で取り乱したキャリーが会場を封鎖して手当たり次第暴れまわるシーンがあるのですが、この作品ではキャリーがかなり自らの意思で力をコントロールしながら破壊行為にあたっているところがすごく気に入りませんでした。
そもそもキャリーは自らを律することができなくなると潜在している力を解放して周囲を破壊するというところがよかったのに、この作品のキャリーは意識的にその力をちゃんとコントロールできていてまるで「クロニクル」のように少しずつ超能力を自らのものにしていたわけです。

でもキャリーのもつ力って本来はそうじゃないと思うんですよ。
弱くて何にも反抗できなかったキャリーが抑圧に耐えかねて鬱屈を爆発させるからこそあれだけ暴力的な力になるわけで、この作品のようにコントロール可能な力があんなに暴力的であるというのは正直納得できませんでした。


そんなわけで全体的にオリジナルを表層的にトレースして分かりやすくカスタマイズしているだけで、オリジナルを超えるようなリメイクではないなというのが私の感想です。


ただ、これはオリジナル版が好き過ぎる私の感想であり、おそらくオリジナル未見の人や観たことあるけどそんなに思い入れは無いという人にとってはこのリメイクはそんなに悪くないんじゃないかなとも思いましたし、そういう人にはぜひおすすめします。
ホラーと言うほど怖くはないので、怖いのが苦手な人もぜひぜひ。


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