「ガリレオの苦悩」読んだよ

ガリレオの苦悩 (文春文庫)

ガリレオの苦悩 (文春文庫)

“悪魔の手”と名のる人物から、警視庁に送りつけられた怪文書。そこには、連続殺人の犯行予告と、帝都大学准教授・湯川学を名指して挑発する文面が記されていた。湯川を標的とする犯人の狙いは何か?常識を超えた恐るべき殺人方法とは?邪悪な犯罪者と天才物理学者の対決を圧倒的スケールで描く、大人気シリーズ第四弾。

http://www.amazon.co.jp/dp/416711013X

本作はシリーズ4作目となる作品ですが過去の3作品はすべて読んでいて映画「容疑者Xの献身」も観ましたが、ドラマについてはぜんぶ未見です。ドラマは観ていないのでコメントできませんが、映画はわりとおもしろかったと思うもののどちらかというと原作の方が好き派です。

映画公開直後に3作目である「容疑者Xの献身」までは読んでいたのですが、映画公開の時点ではその続きとなる作品は文庫化されていなかったのでなんとなく続きを読まないままになっていました。で、先日おとうとが遊びに来るというので部屋の本棚を整理していたら3作目までの文庫がまとまって出てきましてすごい読みたくなったので1作目から3作目までを一気に読了してその続きとなる本作を本屋で購入してきました。


状況説明長い!


そんなわけで4年ぶりとなるガリレオシリーズを読んだのですが、予想もつかない不思議な現象を冷静な視点で分析し、仮定を立てて実証してしまう湯川の魅力が十分伝わるよい作品でした。唯一の長編となった3作目「容疑者Xの献身」以外の作品と同様に、本作は短編集となっていて短時間でスッと読み切れる適度なボリュームと、事件発生から解決までテンポよくそして謎解きの気持ちよさも味わえる絶妙なエピソードが楽しめるおもしろ短編ばかりのすばらしい出来ばえでした。


本シリーズの基本的な流れとしては「事件が起こる」→「巧妙に隠ぺいされる」→「警察お手上げ」→「湯川が少しずつひもとく」→「解決」というふうになると思います。この「巧妙に事実を隠ぺいする」というところで技術的に先進的な、もしくはとてもユニークなアイテム*1が出てくることがあります。

この作品ではそういった多くの人が知らない先進的なアイテムを使うことで読み手の想像・推理を上回ってみせるのもひとつのおもしろさのエッセンスとして効果を発揮しています。そしてそれはそれでたしかに意外性もあっておもしろいのですが、でも個人的にはそういった科学的に新しいアイテムはあまり過度に使ってほしくないなと思っています。

上でも書いたとおりたしかに意外性はあるのですが、それがいきすぎると結局ただの突拍子のないエピソードばかりになってんじゃないかと思うからです。それよりももっと原始的な感情の変化や違和感のある発言に手がかりを見つけて解決に結びつくという方がおもしろいと思うんですよね。


そういった意味では「容疑者Xの献身」は本当に最高だったなと思うし、いまのところシリーズの中ではあれを超える作品は観当たりません。


ちなみにこの作品からあらたなメンバーとして女性警官の内海が加わるのですが、正直彼女の魅力というのはいまいちつかみきれませんでした。これからの作品にはたくさん出てくると思いますので、そちらを読んで判断したいと思います。

*1:話のネタバレになるので書けませんが