カメラメーカーに務める遠間憲太郎(佐藤浩市)。取引先である「カメラのトガシ」の社長・富樫(西村雅彦)との間に友情が芽生え、心を通わすようになっていく。互いに本音を語り合う中で、2人はこれからの人生をどう歩んでいくのかを模索していくようになる。そんな折、何もない草原にただ椅子がぽつんと置かれた写真に出会う。その写真に桃源郷を見た遠間、2人の心に強い衝撃が走り――。
『草原の椅子』作品情報 | cinemacafe.net
宇都宮ヒカリ座で観てきました。
20年来の大好きな作家である宮本輝さんの作品が映画化されるということで楽しみにしていたのですが、正直に言ってよい作品だったとは言いがたい内容でした。ありていにいえばおもしろくなかったです。
ストーリーは結構おもしろくてよかったのですが、登場するすべての人たちが「この人はどういう人なのか」という部分の描写がほとんどなくていまいち感情移入できませんでしたし、さらに全員の行動や発言のいずれもが思い付きや突拍子のないものにしか見えなくて説得力が微塵も感じられず、脈絡のなさに終始いらだってしょうがありませんでした。
ただ、観ていてすごく感じたのはこの作品には宮本輝さんの小説のエッセンスが詰まっているということです。
人生は思うとおりにいかないことばかりであるということを痛感させられるエピソードの数々や、星回りや運命という言葉のつかいどころ。さらには50歳を超えて父親になるというシチュエーション等、作品に散りばめられたいくつもの要素が宮本輝さんの作品のエッセンスを内包していることをつよく実感できたのです。わたしの大好きな「流転の海」シリーズと共通したテーマが作品の中に横たわっていることを感じたし、著者の表現したいなにかがしっかりと組み込まれていることははっきりとわかりました。
そしてこの作品が宮本輝さんの小説を忠実に映画化したものであると考えたときに、なぜこの映画がおもしろくなかったのか分かったような気がしたのです。
本作は原作で描かれていたイベントについてはちゃんとフォローして描いているのですが、登場人物の心理描写についてはほとんどうまく描けていません。たしかに文字で描かれたイベントを映像に変換するのは比較的しやすいのですが、逆に心理描写を映像にするというのはものすごくハードルが高いような気がします。
じゃあ心理描写をすべて心の声としてしゃべらせたらいいじゃん?と思ったりもしたのですが、さすがにそれは味気なさすぎますし、かといって心情の機微を映像で表現するのはちょっとむずかしそうです。結局、原作を表層的に映像化してしまったがゆえにこのような残念な内容の作品になってしまったのではないかと思うし、仮にそうだとすれば残念だと思います。
あとこれは映画本編にはまったく関係ないのですが、ヒカリ座2の音声が壊滅的にダメで終始音が割れていて気になって気になってしょうがありませんでした。もうちょっとでデジタル上映に切り替えるのでいまさらスピーカーを直すのも難しいのでしょうが、あれはさすがに厳しいと思います。
デジタル上映への切り替えを前にしてこれを直している場合ではないというのは重々わかるのですが、あそこまで音が割れてしまうとあのスクリーンで上映される作品については別の劇場で観ることも検討しないといけないなと思ってしまいます。
とくにエンドロールで流れていたGLAYの歌はまるで別人が歌っているかのようにひどくて耐えがたく、最後まで観ずに途中で帰ってきてしまいました。

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