「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」見たよ


家族とともに、経営する動物園の様々な動物たちを乗せた貨物船で航海に出たが嵐に見舞われ、ただひとり生き残った16歳の少年・パイ。パイが遭難した小さな救命ボートには、トラが隠れていた。このあまりにも巨大な試練に直面した少年は、どのようにトラとの共存関係を築き、希望をたぐり寄せていくのか。絶望的な現実の中でも前向きな気持ちを失わないパイの227日間を描く。

『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』作品情報 | cinemacafe.net


(注意)
本エントリーは作品の内容に触れている部分がありますので、未見の方はご注意ください。


TOHOシネマズ宇都宮で観てきました。


「海難事故にあった少年が虎といっしょに227日間漂流をする」


はじめてこの作品の概要を読んだときは、「これは実話をベースにしたような作品かな?」と思っていました。
内容的には「こういう信じられないような出来事が実際にあったんですよ!」というような、たとえるならばアンビリーバボーで特集が組まれるようなめずらしい系の実話かなと思ったのです。


ところが、劇場で予告を観てみたら現実の出来事とは思えないほど美しい映像が次々と映し出されていて、実際に起こった事実を描写しただけの話ではないんじゃないか?という疑問がわきあがってきたのです。そしてもしこの直感が正しくて実話ベースの話ではないするとすれば、とても観念的なお話なんじゃないかといういう予感がわいてきたのです。
率直に言ってこみいった物語を紐解く能力や読解力にはあまり自信がないので、回りくどく話を語られても理解できないしいくら映像がきれいでも話がわからなかったら楽しめないだろうなと不安になりまして観に行こうかどうかすごく悩みました。


そしてその悩みは予告を観れば観るほど大きくなっていったのですが、悩む気持ちと同時に「別に意味なんてわかんなくてもいいからこの映像を3Dで観てみたい」と思うくらい映像も気に入ってしまいまして、あれこれ悩んだのですがとりあえず観ることにしました。


まず作品を鑑賞してのざっくりした感想を述べるととてもよかったです。

漂流メインの話かと思いきや、そこに至るまでの前ふりとして主人公パイの生い立ちや思考の元となった出来事が丁寧に描かれていたのがとても好印象でした。前半はやや単調でつまらないと感じる部分もなくはなかったのですが、パイの性格を形づくった少年期の出来事やその結果として形成された彼の人となりを序盤でしっかりと描いたことで、その後の彼の行動や思考のひとつひとつに説得力が感じられました。

こういった物語の土台となる部分がきっちりと作りこまれていたために、ストレスなく漂流以降の物語を受け入れることが出来たように思います。


そして心配していたストーリーについてですが、当初想像していたとおり現実に起きたことそのものではないことは観ている途中ではっきりとしました。

その確信がもてたのはボートでハイエナとシマウマ、オラウータン、そしてパイがひとつのボートで共存していたシーンでしたが、この一連のシーンでパイが取った行動がどこか不自然だったことと、いるはずのトラが一度も出てこないことが「これは事実そのものではなくなにかを隠喩した状況の描写」であることが自然と理解できたのです。そして「なにかあるけどいまはわからない」とはっきりと割り切れたことで、この物語の裏にあるものについて深く考えるよりもまずはこの物語をいったん飲み込んで受け入れようと思えたのです。


だから観ている最中は不可解な点や理解できない点があってもまったく気にならなかったし、物語のラストでこの作品の本当の姿が明かされたときにはわからなかった部分がほどけるように理解できるようになる瞬間の心地よさを思う存分味わうことができました。これは単なる非現実的で不思議なお話ではなく、つらく過酷な現実を受け入れるためにすがたを変えた物語であり、童話や昔話、神話のような長く語り継がれる物語なんだなと見終えて感じました。


できれば2回目観たいな。



ちなみに最後までわからない部分は残りましたが、そちらは町山さんのツイートを読んで消化できたので映画を観てわからない部分がある方はそちらを読むことをおすすめします(町山さんのツイートのまとめはこちら)。


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