「映画 妖怪人間ベム」見たよ


暗く音のない世界でひとつの細胞から生まれた3つの生き物…。それは人間になれなかった妖怪人間のベム・ベラ・ベロ。醜い体に正義の心を持つ彼らは、同じくして生まれた「名前の無い男」との戦いで、人間になるよりも“人間を守って生きていく”ことを選び、友人の夏目刑事たちの前から姿を消したベム・ベラ・ベロはあてのない旅を続けるが新たに辿りついた街で、不可解な怪事件が次々に発生。事件の謎を追うベム達の前に、新たな強敵が現れる…。そして、ついに明かされる衝撃の真実とは――?

『映画 妖怪人間ベム』作品情報 | cinemacafe.net

TOHOシネマズ宇都宮で観てきました。


「TVでドラマ版を放送」→「劇場版として映画館で上映」という流れは邦画ではここ数年よく見かけるパターンのひとつです。

古くは「踊る大捜査線」あたりが最初なのかそれともそれ以前にもいくつか事例があるのかも知れませんが、最近では「ROOKIES」や「SP」、「海猿」もその流れで大ヒットした作品でして、当たった時にはものすごいヒットとなっています。「海猿」や「ROOKIES」はたしか年間の興行収入ランキングでもかなり上位にきていたはずです*1


この大ヒットに味を占めたのか、テレビ局はここ最近このパターンを好んでいるようでして、年に数件はこのような流れで公開される作品が後を絶ちません。
今年も「ホタルノヒカリ」や「海猿」など、シネコンで上映される作品の少なくない割合の作品がこの手の作品だったりします。


もちろんテレビで好評だった作品を映画化すること自体が悪いわけもなく、テレビでそれなりの視聴率を稼いでいたのであればそれなりの人の入りも見込めますし、ファンだって続きが観れるのは嬉しいことだと思います。わたしも「SP」や「アンフェア」はすごい好きでしたし、映画も楽しみにしてたのでその気持ちはよくわかります。


ただ、一方ではドラマが始まる時点で映画化ありきで予定を組まれているものもあるようでして、テレビ版がさんざんな視聴率だったのに映画化されてしまい、死者に鞭打つという言葉がぴったりな状態で映画が上映されることもたまにあります。具体的な名前を出していいものかどうか悩みますが、「スシ王子!」や「こち亀」なんかその最たる例だと思うのですが、ドラマがそもそもおもしろくなかったのでお金を払って映画を観に行くという奇特な人はほとんどいません。

観に行くのは出演者のファンか、もしくはわたしのような地雷処理班くらいしかいませんし、さらにおもしろくないドラマをベースに映画を作っているのでその映画がおもしろいということもなくて地雷の再生産みたいな状況になってしまっています。おそろしい...。


当然口コミでヒット!ということもありませんし、ヒットするどころかドラマが低調だったことでダメージを受けているはずの出演者や製作者にとっては死体蹴りをされているようなそんな耐えがたい状況をうみだしています。関係者の胸の内を思うとさすがに気の毒でしょうがありません。


さて。話が遠まわりしてしまいましたが、そんなわけで本作「妖怪人間ベム」もまたドラマ→映画の流れを汲んでいる作品であり、かつ、予告を観る限りではかなりつまらなそうだったので地雷だろうと踏んでいたのですが、ところがどっこい(死語)これがすごいおもしろかったです。

ドラマは未見ですが、キャラクターの造形や人物描写、そしてストーリーや演出のそれぞれにはツッコみどころを残していたものの*2、でも言いたいことがはっきりしていてその言いたいことがしっかりと伝わってくる作品でしてわたしはとても気に入りました。最初は、見た目の醜さで人間に差別され続けてきたベムたちが人間になりたいと思う気持ちは分かるなと思っていたのですが、ベムたちのピュアさや人間たちの利己的で傲慢な態度を見比べているうちに、果たして本当に人間になることがいいことなのかどうかという疑問がわいてきました。

悪を取りこめば人間になれるという言葉が示すとおり、人間になるためには見た目の普通さと引き換えにうちに秘めているその正義の心を差し出さないといけないわけでそのことにベムは常に葛藤しているわけです。ベムは言葉少なにその状況に悩むわけでして、その口数の少なさがベムがいかに深く考えて向き合っているのかを物語っているように感じました。


もう観る前から絶対に地雷だと思っていたので、観に行く前に「地雷処理してくるわ」なんてtwitterに書いちゃったりしていたのですが、あのときの自分をグーでぶん殴ってやりたいくらい反省してます。

そういえば最近観た「任侠ヘルパー」も同じような流れを汲んでいるのですがすごいおもしろかったですし、安易に地雷と決めつけるのはよくないなと心の底から反省しました。


公式サイトはこちら

*1:調べたら「海猿」はシリーズを通して各作品50億円程度、「ROOKIES」は何と80億円超という興行収入を記録していました。すごい...。

*2:おいおい、全部じゃん!というツッコみはご遠慮ください