「砂漠でサーモンフィッシング」見たよ


英国立水産研究所のフレッド(ユアン・マクレガー)は、イエメンの富豪シャイフ・ムハンマド代理人であるハリエット(エミリー・ブラント)から、砂漠の国・イエメンに川を流し、鮭釣りができるようにして欲しいという依頼を受ける。突拍子もない申し出に、フレッドは「無理だ」と断るが、話を聞きつけた英首相官邸広報は、壮大な金がつぎこまれるこのプロジェクトを実現させようと画策し、フレッドにその計画を押しつけるが…。

『砂漠でサーモン・フィッシング』作品情報 | cinemacafe.net

(注意)
本エントリーは作品の内容に触れている部分があるのでご注意ください。


MOVIX宇都宮で観てきました。


「イエメンに川を作って鮭を放流してそこでサケ釣りしようぜ!」と大富豪が言い出したのでさあ大変!というお話でしたが、たいへんおもしろかったです。

本作は大きく2つのパートが同時並行的に進んでおりまして、ひとつはイエメンに鮭を連れて行こうぜプロジェクトの遂行のお話で、もうひとつはフレッドとハリエットそれぞれのプライベートなお話+二人のラブストーリーです。

わたしが特に気に入ったのは前者の鮭プロジェクトのお話でして、やる前からあーだこーだと理屈ばかりこねて「ソンナノデキネー、デキネー」とわめきたてていたフレッドが、大富豪やその代理人であるハリエットがどれだけ本気でそれを実現しようとしているのかに触れることで徐々にその無茶な話に本気でのめり込んでいく様子がすごくリアルでよかったです。



こんなのデキネーヨ!


世の中にはこの作品のフレッドのように、やる前から「そんなのは出来ない、出来るはずがない」という人はわりと多くて、わたしはそういう人に出会うたびに「とりあえず一度やってみてから言えよ!」と思っています。ただ、専門職の人は知識が豊富であるがゆえにその知識を総動員して脳内でシミュレーションすればそれなりの確度の結果を導き出せることも事実でして、やらずに分かることもあるのはよくわかります。


でも本当にそのことが成し遂げたいことであれば多少無理そうであってもその実現に向けていろいろと試行錯誤するし、そもそもそういうトライアンドエラーを繰り返す覚悟がなければ本当に成し遂げたいことって達成できないと思うのです。もちろんやる気を出して取り組んでもダメなことなんてたくさんありますが、でも何か実現が難しいことを為すためにはまずはやる気を出して本気で取り組むことが必要条件になるのです。


まさに作中でシャイフがフレッドに言ったように「前向きに取り組まなければ何も実現できない」ということであって、シャイフの情熱や本気で取り組もうとする姿勢に感化されたフレッドが、「実現がむずかしいからやりたくない」という心境から徐々に「むずかしいけど何とか実現したい」に変わっていき、最後にはこれが自分の取り組むべき仕事だと全身全霊で取り組むようになっていくその変化がグッときました。

人間が自分の役割を自覚するに至るプロセスが丁寧に描かれていてすごくよかったです。


逆にもうひとつのフレッドとハリエットのプライベートなトピックや二人のラブストーリーについては無い方がよかったなーというのが率直な感想です。

フレッドとハリエットは仕事のパートナーとしてはすごくよかったと思うけれど、だからといって惹かれあう仲ではなかったような気がするんですよね。大富豪の道楽と思う人がいても仕方がないくらいに大きくてばかげた夢物語をいっしょにみて、その実現に向けて頑張ったことで、どこか気持ちがつながったような気になってしまうのは分かる気がします。

百歩譲って妻との間に確執があったフレッドが若くてかわいくてまっすぐなハリエットに惹かれるのは分からなくはないです。フレッドに別れを告げられた奥さんが「中年の危機」だなんて言ってましたが、たしかに長くいれば倦怠期もあるだろうし心移りしてしまうこともあるかも知れません。



こんなにかわいい子が仕事のパートナーとしてずっといっしょだったらそれは惚れるよね....。フレッドは悪くないよ!


でもボーイフレンドの不在が日常生活にあれだけ支障をきたしていたハリエットが、あんなふうにフレッドに乗り換えてしまうその心境が正直わからなかったんですよね。わからないというか、いまいち腑に落ちなくて納得できませんでした。軽い女じゃない、本気で好きだと言っていたハリエットの心変わりはちょっと悲しかったです。

だからこんなふうにラブストーリーにしなくても、よき仕事のパートナーとして二人ががんばり続ける姿を描いてくれた方がよかったなと思いました。


ただ、とは言え最初に書いたとおり全体としての出来はとてもよくて、ストーリーそのもののおもしろさに加えて首相と広報担当のアホみたいなやり取り*1や、広報担当の冗談で済ませていいものかどうか悩むようなブラックジョークがよいスパイスとしてはたらいていて不意にそういった爆弾が投げ込まれては笑わされるということが何度もあってそれもまた飽きずに観られる一因となっていました。

あの広報のやり手おばちゃんのキャラも発言もすごくよかったです。


あと、そういえば舞台がイエメンだったからなのかイケメンが多く出てくる作品でした。

イエメンとイケメン。イエメンとイケメン....。ね!(察して!)


公式サイトはこちら

*1:彼らがチャットのようなWebサービスでメッセージのやり取りをしていたのですがあれって実在するサービスなんですかね。おもしそうー。