家族との時間を大切にするため、会社を辞めて郊外の家に引越しをしたウィル(ダニエル・クレイグ)。愛する妻・リジー(レイチェル・ワイズ)や子供たちと共に引越した新居はかつて父親を除く家族全員が惨殺された殺人事件の起こった家だった。最初は気にせず生活をしようとしていたウィルたちだったが、次第に家族を狙う不審な男が家の周りに現れたり、子供たちが幽霊のようなものを見始めたりと不可解な出来事が起こり始める。さらに犯人はまだ逮捕されていないという情報を、向かいの家に住む女性、アン(ナオミ・ワッツ)から得る。そこでウィルは、家族を守るために独自に事件を捜査し始めるが…。
『ドリームハウス』作品情報 | cinemacafe.net
TOHOシネマズ宇都宮で観てきました。
本作は「ある男性が家族との時間を作るために会社を辞めて大きな家に引っ越して家で働くことにする」というところから話が始まるのですが、具体的な説明は無いものの、観始めてからずっともやもやとした違和感がぬぐえずにいました。
そう感じるはっきりとした理由がわからず、さらには彼が家族と幸せそうに過ごす様子にさえもどこか不穏な空気を感じとってしまうありさまでして、なにがおかしいのかわからないけどなんかおかしいというもどかしさにまみれながら鑑賞するはめになりました。
そんなわけで、前半はまるで濃い霧に包まれているような状態のまましばらく眉間にしわを寄せて観てましたよ...。
かゆい場所がわからないけどとにかくかゆい!的な状況*1がものすごくつらかったのですが、話が進んだ中盤のある場面でその違和感がなにをあらわしていたのかがとつじょ明かされることになります。これがもうほんとうに唐突に明かされましてその不意打ちにはびっくりしましたが、その出来事がきっかけで本来の物語がいっきに見えてきてそれまでの世界がひっくり返るわけです。
正直に言うと途中から「なんとなくそうなんじゃないかな」という予感はあったので薄々は感じていましたが、でも違和感の源泉が明確になったことで言葉では言い表せないくらいすっきりしました。
そして話の筋がはっきりしてからの物語の切り替えしは本当に見事でして、話を完全にひっくり返したのちにあんなすてきな結末としてまとめていたその手際の良さにはとても感心しました。前半が不完全燃焼だった分、後半の変化を伴った怒涛の展開はすごい楽しめました。
以下、ネタバレありでもうちょっと続けます。
本作の内容を一旦整理するとこんな感じになります。
(登場人物)
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- パパ :ウィル
- ママ :リジー
- 娘 :二人いる。かわいい。(名前忘れた)
- 向かいの家の奥さん:アン
- 向かいの家の旦那 :感じの悪いおっさん(名前忘れた)
(冒頭で描かれていた話)
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- ウィルは会社を辞めた
- ウィルは郊外に中古の家を買ってそこに住むことにした
- ところが買った家は過去に殺人事件があったらしい
- しかもその犯人は生きていて施設に入っている(死刑にはならない)
- その施設に行ってみたら犯人のピーターはもういなかった
- 最近、家の周りで怪しい人影がなんども目撃されている
- もしかして犯人が戻ってきてウィル一家を惨殺しようとしてるんじゃ....。
- 向かいの家のアンが何か知ってそうなんだけど教えてくれない。
そして「犯人が自分たち一家の安全をおびやかしている!」と焦ったウィルが、犯人ともくされるピーター・ウォードについて調べていたところ、ある精神病院にたどりつきそこに行ってみたら、なんとピーター・ウォードというのはウィルのことでしたという話になるわけです。
つまり、ウィルというのは家族を殺した罪に問われたことで追い詰められたピーター・ウォードが自身の中に生み出した別の人格であり*2、物理的にはウィル==ピーター・ウォードということなのです。
会社を辞めたというのは病院から出ていくことをそう認識していたというだけであり、リジーも娘2人も亡くなっているので彼が家族といっしょに過ごしていたあの幸せな時間は家族への執着が作り上げた彼にしか見えない想像上の出来事でしかなかったわけです。
なんて悲しいお話なんだ....。
結局ウィルの家族を殺したのは向かいの家の旦那であり、しかも本当は自分の妻を殺そうと人を雇ったのですがそいつが人違いをしてウィルの家族を殺してしまったというなんともいたたまれないことがわかってしまったのです。ウィルというかピーター・ウォードが無実であることはわかったものの、でもそんなことがわかったところでなにも変わらないし、むしろ家族が皆殺しにされてしまったことを受け入れないといけなくなるのです。
ただの幸せそうな家族にしか見えなかった風景が実は彼が渇望していた家族への想いの強さであったことに思いを至らせると、その切なさと救いの無さにどうしようもない脱力感をおぼえずにはいられませんでした。
で、ひとつ気になったのは、本作で精神異常者として描かれる男性の名前がウォードである点です。
ウォードと聞いてすぐに思い出すのは昨年公開された「ザ・ウォード」という映画です。
この作品も本作と同じように*3精神に異常をきたしてしまった人の姿を描いた内容でしたが、両作品に「Ward」という名前が出てくるんですよね。本作ではPeter Wardという人物名で、The Wardでは....なんだっけ?病院の名前だっけ....。ちょっと忘れてしまったのですが、同じ名詞が出てくる作品がどちらも似たようなことを描いていたために、ウォードという単語を聞くとつい精神異常に関わる物語をイメージしちゃうようになっちゃいました。
単なる偶然なのか、それともなにか"ウォード"という名前にはなにかいわくがあるのかすごく気になっています。
でももしウォードという名前がいわく付きだとしたら、それ自体がネタバレになっちゃうのでそれはなくてただの偶然ないのかな....(自己完結)。
(関連リンク)
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