結婚したばかりの夫婦が、夫の急な出張で一晩だけ離ればなれになる。夫・マイケル(サム・ワーシントン)は出張に同行した同じ会社の女性・ローラ(エヴァ・メンデス)に誘惑され、妻・ジョアンナ(キーラ・ナイトレイ)はかつてのフランス人の恋人・アレックス(ギョーム・カネ)と道でばったり出くわしてしまう…。
『恋と愛の測り方』作品情報 | cinemacafe.net
宇都宮ヒカリ座で観てきました。
ある夫婦がそれぞれ別の相手と過ごした一晩を描いた作品でしたが、既婚者という立場で観ると苦くて気持ちが重くなる作品でした。
観ているときはその過酷な状況に悶え、観終わった直後は「何が正しくて何が間違っていたのか?」とか「二人はどうすればよかったのか?」といったことをあれこれ考えてシミュレーションしては正解が見つからないことに絶望してため息をつくという非生産的な時間を送り、そして最後はいたたまれなくてただただ落ち込むはめになるというたいへんハードな内容でした。
予告を見てそこそこ覚悟していたつもりではありましたが、こういった「自分の身に置き換えて考えることができるテーマ」というのは作品の世界に没入しやすいし、話の内容が重いものであれば結果としてこんなふうに大きなダメージを負ってしまうことをあらためて思い知りました。ほんと大打撃....。
さて。
本作で描くのは同じ職場にいる女性との浮気に踏み出そうとしている夫と昔付き合っていた小説家の男との再会に燃える妻の様子でして、両者がそれぞれの浮気相手とどういうやり取りをするのか、そしてどういった選択をしてどういう一歩を踏み出すのかというところが見どころです。
既婚者はもちろんのこと、いま長く付き合っている人がいる人であれば他人事として処理するのはむずかしい作品だと感じました。
ストーリーはまったく好きではないし正直観ていてしんどかったのですが、観終えていろいろと考え尽くした今はもう一度観てみたいなと思っています。ぜんぜん好きだとは思っていなかったけど、わりと好きなんだろうなあ....この作品。
以下、作品の内容や結末にふれながらもうちょっと思ったところをまとめたいと思います。
後ろめたさを感じながらも結局セックスまでしてしまった夫と、悪びれもせずにキスをしたり添い寝もしたけど、結局セックスまではしなかった妻。
これを言い換えれば「心の浮気はせずに体の浮気をした夫」と「体の浮気はせずに心の浮気をした妻*1」と言えると思うのですが、じゃあ心の浮気と体の浮気どっちが悪いの?と聞かれたら、既婚者である立場上「どっちも悪い」という模範解答を述べることしかできません。どっちが悪いと断ずることは自らの立場を危うくするだけなのでそんな比較はできないんですよ....。
ただ、自らの立場をまったく考慮せずに自分の率直な気持ちを述べさせていただくと、まったく同等に悪いなんてことは当然思っていなくて私は心の浮気の方が嫌だなあと思うのです。つまりこの映画でいうと、妻の方が性質が悪いというのが私の意見です。あ、言っちゃった!怒られそう。
もちろん、このケースに限って言えば両者が同時に浮気への一歩を踏み出す以前に、そもそも夫の側に浮気の兆候があってそれを察知して妻がナイーブになっていたという点は見逃せないところではあります。そんなふうに妻が弱っているところに偶然過去に付き合っていた男性と再会した、つまり彼女以外の他者の行動が妻の浮気のトリガーとなっているというのはわかりますが、それでもやはりその場で終わる体の浮気よりも今後も継続するであろう心の浮気の方が性質が悪いとわたしは思うのです*2。
繰り返しになりますが心と体の浮気どっちも悪いのは前提です。
ただ、そうだとしてもこの作品でジョアンナがしたような精神的な浮気をされるくらいだったら、いっそ体だけと割り切った浮気の方がまだ許す余地が残っているような気がします。いやほんとどっちも想像するのさえ嫌なんですけど、心をもっていかれたらもうリカバリーなんてできないじゃないですか....。
結局、夫が望んだのは肉体的な欲求のはけ口であり、妻が望んだのはひとりの女性として求めて欲しいという精神的な欲求だったのですが、それって本来は夫婦それぞれがお互いに満たしあえる欲求なはずなんですよ。ところがそのはけ口を外に求めてしまう、求めずにはいられないというところにものすごい寂しさを感じました。夫婦にかぎらず、長くいっしょにいる相手の大事さというのはなんとなく過小評価してしまいがちですし、そのことはわたしもいくつか思い至るところはあります。
だからこそ、自分にとってその相手がどのくらい大事なのかということをいつも適正な尺度で図れるような工夫はしたいなと思ったし、逆に相手にとって自分が大事な相手だと自然に思ってもらえるような努力もしていきたいなと感じました。
旦那の前だとこんな顔してるのに....。
浮気相手の前でこんな顔されたと知ってしまったらもう立ち直れないですよ。
ちなみに、わたしは予告の中でも本編でも出てきた「恋は一瞬だが、愛は歳月だ」というセリフがすごく印象に残っています。
心の浮気にしても体の浮気にしてもそれをされて悲しいと感じるのは、長い歳月をかけて積み重ねてきたものを失うリスクを抱えてまで一瞬の恋に手を伸ばそうとするからなんだろうなと思います。
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