「新しい靴を買わなくちゃ」見たよ


妹に付き添って、パリ観光にやって来たカメラマンのセン(向井理)は、パリに着くなり、単独行動をしたいと言う妹スズメ(桐谷美玲)に置き去りにされてしまう。泊まるはずのホテルもわからず途方にくれるセンだが、落としたパスポートが踏まれて破れてしまい、さらに困った状況に…。踏んだ靴の主は、パリでフリーペーパーの編集をする日本人女性・アオイ(中山美穂)だった。パスポートを踏んだために、ヒールが折れてしまったアオイの靴を、接着剤で直すセン。感謝したアオイは、困ったときのために自分の連絡先を渡す…。

『新しい靴を買わなくちゃ』作品情報 | cinemacafe.net

TOHOシネマズ宇都宮で観てきました。


もともと自分一人でも観に行こうと思っていたのですが、マコ*1が「綾野剛くんが出てるので観たいな」と言い出したのでいっしょに観に行ってきました。わたしはとてもおもしろくて気に入ったのですが、観終わった妻は「ミポリンが出てたシーンはほとんど眠かった」という身も蓋もない感想をもらしていました。

ミポリンが出てたシーンってほとんど全部じゃん....」とツッコもうかと思ったものの、ネットではあまり評判がよくなかったことを思い出して「そういう感想も少なくないのかも知れないな」とその意見を受け入れることにしました。相手の意見をすなおに受け入れるというのは、夫婦円満の秘訣のひとt(以下略)



さて。

本作はパリで妹に置いてけぼりにされて困っていたセン(向井くん)が、偶然そこを通りがかった現地在住のアオイ(ミポリン)にパスポートを踏まれるというハプニングにあってそれをきっかけに仲良くなって恋に落ちるというお話です。「なんでパスポートを踏まれるんだ...」という疑問や「その転び方はちょっと...」という黒い気持ちをグッと飲み込んで「とりあえずそういうもんだ」と受け入れられる人は間違いなくこの作品を楽しめると思いますし、逆にそこでつまづいたり「そんな展開ありえないだろ...」と思った人はおそらくこの作品とは合わないだろうと思います。


そして妻を含めた多くの方は後者だったようでして、結果評判がよろしくないということになるのだと思います。


この作品が嫌いだという方の意見はたくさん読んだのですが正直あまり興味がないのでここではスルーするとして、唯一この作品を褒めている方がマイミクにいました。あまりこういう作品は観なさそうな方だったのですごい意外だったのですが、その方が日記で「フィクションを廃してこその河瀬直美、フィクションのリアル西川美和、リアルなフィクション北川悦吏子」と書いていてなるほどと思わず笑ってしまいました。

このリアルなフィクションという表現が、わたしにはすごいピンときたのです。


アオイの発言や行動にはそれなりに年を重ねた女性が見せるしたたかさが見え隠れするし、わたしはアオイが演技しているように見える部分もふくめてリアルだと感じたのですが、一方ではそのしたたかさが透けて見える部分がリアルじゃないと感じる人もいるようでして、後者に属する人のほとんどはこの作品のことがあまり楽しめなかったように見受けられました。


だからなんだという話でもないのですが、そのリアルさとフィクションであることのバランスがすごく気に入ったんだなと自分の感情の原因を知ることができて満足しました。本来は「何かを嫌いになるのは理由があるけど、好きになることに理由はない」というのが持論でして、嫌いになったものを考察することはあっても好きになったものを深く考えることはないんですよね。

ただ、ここまで周囲と感じたや感想が違うとその理由が知りたいと思うのもまた自然なことでして、今回は好きの原因を考えずにはいられませんでした。


あと映画の内容についてですが、"センの観光"や"アオイの仕事についていく"といった口実をうまく利用してパリの街並みをくわしく見せてくれたのはすごくよかったです。本当にパリの街並みを歩いているような気分になれたし、単純なわたしは観ていたらパリに行って見たくなりました。

一番好きなシーンは二人がセーヌ川で船に乗るシーンなのですが、「ビフォア・サンセット」でも似たようなシーンがあってそれをほうふつとさせる内容だったんですよね。船に乗ってとりとめのない話をする二人のやりとりがすごいよかったのですが、ただセンが「アオイさんのエッフェル塔になりたいなー」というセクハラまがいの発言をぶつけるところがあってそこだけは思わず吹き出してしまいました。

穏やかなやり取りの中にいきなり爆弾をぶち込んでくるそのテロとも言える破壊的な演出はすごいです*2


と、なかなかユニークでおもしろいメインストーリーとは別に、サブストーリーとしてスズメ(桐谷さん)とカンゴ(綾野剛くん)のエピソードも語られます。


日本とパリという遠距離恋愛に疲れたスズメ(桐谷さん)が、ある想いを伝えにカンゴ(綾野剛くん)に会いに行くというお話なんですが、このトピックがいまいち弱くて必然性に欠けているような気がしました。思い込んだら突っ走ってしまう部分や押してばかりで引くことのできない拙さは、二人がどれだけ若いのかということを存分に実感させてくれたし「こういうのが若さゆえってやつだよねー」と割と共感できたのです。だからエピソード単体では悪くないなと思うのですが、あえて同じ作品の中で描くのであればミポリンと向井くんの二人との違いを意識させてくれるように描いて欲しかったなと思ったのです*3


向井くんがパリにくることになった動機づけとしてはたしかにスズメの存在があった方が自然だというのはわからなくはないのですが、だけどあえてスズメとカンゴのエピソードを入れる必然性はあんまりなかったかなという気がしました。


そんなわけで言いたことはいろいろとありつつ、そして誰にもおすすめはできませんがとても好きな作品です。


公式サイトはこちら

*1:

*2:かなり本気で褒めてます

*3:もし何か意図があったけどわたしが汲み取れていないのであれば、どなたかご指摘いただけるとうれしいです