「風花」読んだよ

風花 (集英社文庫)

風花 (集英社文庫)

夫に恋人がいた。離婚をほのめかされた。わたしはいったい、どう、したいんだろう―。夫婦の間に立ちこめる、微妙なざわめき。途方に暮れながらも、自分と向き合い、夫と向き合い、少しずつ前へ進みはじめた、のゆり、33歳の物語。

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旦那に浮気された女性の心の変遷というか機微を描いた作品でしたが、白から黒へのグラデーションを描くようにちょっとずつ心の色が変わっていくように心境の変わり様を丁寧に描いていてとてもおもしろかったです。

浮気されたことに怒るでもなく、むしろ旦那が相手に惹かれて自分から離れていくことを恐れて旦那に接していた女性が、長い時間をかけて自分の気持ちと向き合うことで徐々に本来おぼえるべき感情にたどりついていく様子がとても自然でスッと理解できる気がしました。

浮気されたことを知ってなお数ヶ月もそのことを話し合うことなくそのままの生活を続けるというのはちょっとリアリティがないというか、作品全体をとおしてこの女性の感情の波の無さには何か大事なものが欠如しているような不思議な印象を受けたのですが、日常生活で感情に抑揚が無いからこそ、長い時間を経ての変化が伝わってくるのかなと思いました。


日常のリアリティを排除することで、長期間の変化が見えやすくなって今度は現実味が出てくるというのはおもしろいなと感じました。


昨日「夢売るふたり」という映画を観まして、こも女性が浮気をされたことから始まる物語でしたがとてもおもしろかったです。


女性が浮気されるというシチュエーションって何でこんなにおもしろいドラマになるんだろうと感心したのですが、そんなことを書くと浮気することを礼賛しているのかと怒られそうなのでこれくらいで止めておきます。


ちなみにひとつ気になったのは、主人公である女性の名前が「のゆり」だったということです。

鍵括弧で「のゆり」と括ってしまえばまだわかりやすいのですが、文節の切れ方によっては「××の、ゆり」と読める部分もあって、何度か「ゆり」と読んでしまうことがありました。別に他人の前で音読しているわけではないので間違ったから恥ずかしいとかそういうことではないのですが、こういう読み間違えやすい名前は何だか嫌だなと思いながら読みました。


読みにくい、誤読しやすい名前ってすごい苦手。