「聴こえてる、ふりをしただけ」見たよ


突然の事故で母親を亡くした11歳の少女・サチ。周囲の大人は「お母さんは魂になって見守ってくれている」と言ってサチを慰めるが、サチはいまいち信じ込めずにいた。母の残していったものをじっと見つめては、そこから何かを感じ取ろうとし、サチの時間は止まっていく。ある日、転校生の希がやってくる。始めは特に興味を示さなかったサチだが、純粋に死後の世界を信じる希の存在に、サチは次第に依存していき――。

『聴こえてる、ふりをしただけ』作品情報 | cinemacafe.net

アップリンクで観てきました。

突如母親を亡くした少女がその死に戸惑う姿を描いた作品でしたが、過度な演出は一切なく、とにかく淡々と日常がつづられていく中にその変化を埋め込んでいるのがとてもよかったです。子どものまっすぐさと残酷さがとてもリアリティをもって描かれていて、その切実さにつよく胸を打たれました。


また本作は母親の喪失が家族に与える影響の大きさもしっかりと描いていて、母親不在の毎日が過ぎていってそんな日常に慣れていきそうになるのですが、一方では不在を真正面から受け止めることができずに苦しむ姿が描かれていて観ていて本当に辛い気分になります。

さらに母の喪失に耐えながら何とか日常を保っているサチ*1と対照的なのが父親でして、妻の不在に耐えられなくなって徐々に壊れていく姿が描かれているのですが、正直この部分については何とも言えない気分になりました。


愛妻を失った辛さにつぶれてしまいそうになる気持ちはよくわかりますが、それでもいま目の前に子どもがいると思うとその一歩手前で立ち止まるんじゃないかなと思うんですよね。なんて、こればかりはいくら同じ立場だろうと分かりあえないということはよくわかっていますが、でもあんなふうに子どもにすべてを押し付けて自分が壊れるなんて無理だなと思うんですよね...。

そこがちょっと納得できなかったかな。


それと、ラストのあたりはやや演出過剰というか一部冗長に感じられる部分もあってちょっと残念でしたが、全体としてはとてもよくまとまっていたし、何よりも登場人物一人一人の考えていることがとてもストレートに伝わってくる内容でして本当におもしろかったです。


ちなみに今回初めてアップリンクで映画を観てきたのですが、まるで親戚の家にある豪華なホームシアターのような鑑賞環境でして、つまり人ん家に上がり込んで映画を見せてもらってるみたいな感じがしてすごくおもしろかったです。たとえば椅子もちょっと立派だけど普通の家にあってもおかしくないような普通の椅子だったし、とにかく全体的にアットホームな感じでのんびりと映画を観てきました。




公式サイトはこちら

*1:実際には耐えきれなくて最後に破たんするのですが