「往復書簡」読んだよ

往復書簡 (幻冬舎文庫)

あれは本当に事故だったのだと、私に納得させてください。高校卒業以来十年ぶりに放送部の同級生が集まった地元での結婚式。女子四人のうち一人だけ欠けた千秋は、行方不明だという。そこには五年前の「事故」が影を落としていた。真実を知りたい悦子は、式の後日、事故現場にいたというあずみと静香に手紙を送る―(「十年後の卒業文集」)。書簡形式の連作ミステリ。

http://www.amazon.co.jp/dp/4344018834

「書簡をやり取りすることである事実を浮き彫りにする」という共通のフレームワークで描かれる物語が複数おさめられた短編集ですがとてもおもしろかったです。著者お得意の独白形式をうまくいかしつつ、物語の中に疑問という点を次々と配置しつつ、徐々に結び付けていくことで物語を進めていく語りのうまさは本当によかったです。

同じ事実を目撃した人であっても、違うふうに見える。

まさに現代版の「藪の中」といった話もありましたが、目撃した事実を同じ事実として共有することの難しさや、そういった齟齬を組み合わせることで本当のことが見えてくることの意外性に感心しました。

著者の過去の作品が好きな方であれば文句なしに楽しめる作品ですし、読んだことのない方にとっては湊さんの芸風を知る入門書としても良い作品だと思います。