「サムシングブルー」読んだよ

サムシングブルー (集英社文庫)

サムシングブルー (集英社文庫)

ありえない。恋人と別れた次の日に、昔の恋人と昔の親友の結婚式の招待状が届くなんて―。今の私に、この結婚は祝えない。小説すばる新人賞作家が丹念に描き出す、幸福を探し求める私たちの物語。

http://www.amazon.co.jp/dp/4087713008

大好きな飛鳥井さんの著書でしたので読むのを楽しみにしていましたが、親友と元彼が結婚することをきっかけに仲の良かった高校の同級生と再会して当時のことを思い出すというお話でしたがとてもユニークでおもしろかったです。

本作の主人公は27歳という年齢なのですが、働き出して5年というと仕事にもそれなりに慣れてくる時期でもあって、毎日毎日目前に並べられたことをこなすことに忙しく追われてそれ以外の部分がおろそかになりやすい時期でもあります。

つまり全体を俯瞰して確認するだけの余裕がない時期なんですよね。

そんなふうに目の前のことしか見えてないような時期というのはとても危険で、いま自らが進んでいる方向が正しい方向なのかどうかを確認することをつい忘れてしまいがちなのです。いくら早く進めたとしても、その進んでいる方向が正しくなければ意味がないんですけどね...。


率直にいって親友と元彼の結婚というのは決してうれしい出来事ではありませんが、上記のような「自らの方向性を確認する」ということを考えると、一度立ち止まって過去に目を向けることで人生全体を俯瞰してこれからどうしたらいいのかを考えるいい機会になるわけです。

「失敗は成功のもと」というのはちょっと意味が違いますが、こういう意図していなかった出来事によって人生がよい方向に変わるのは割とよくあることだし、そういう偶然というか必然のおもしろさみたいなのがこの本には詰まっていてすごくいい話だなと感じました。


ただ、わたしは女性の恋愛話、特に失恋話にはまったく興味がもてなくて、まるで好きな人にフラれることが死活問題であるかのように書かれた文章を読んだり話を聞くだけでうんざりしてしまいます。以前、落ち込んだ人が立ち直るプロセスにすごく興味があった時期がありまして、その時はそのプロセスを知る前段の話として失恋話そのもののにも興味をもっていたのですがいまはもう全然興味がわきません。


そのため、本作の主人公である梨香の心の機微にはまったく興味がもてない上に、いちいち大げさに落ち込んでみせる様子にイライラしてしまいました。


話はおもしろいので、そういう部分に抵抗がなければすごく気に入っただろうなあと思うと残念です。