「父との思い出」

たまに今週のお題に挑戦します。

今週のお題は「父との思い出」です。

普段は言えない感謝の言葉や、お父さんとの思い出、父の日のエピソードなどを、はてなダイアリーに書いてみてください。母の日に負けない投稿、お待ちしています!

今週のお題は「父との思い出」です - はてなダイアリー日記


最近は言われることも減りましたが私は「口から生まれてきた」と揶揄されるくらいにおしゃべりでした。


「会話はバトル」「相手よりも話せなかったら負け」という大変好戦的な価値観をもっておりまして、それを前面に出しすぎてしゃべり過ぎたために嫌われてしまったこともけっして少なくありませんでした。


思い返せば母や祖母はかなり弁が立つというか、何かを言われたときに言い返さないでいると泣くまでいわれっぱなしという大変おそろしい環境でしたので、おそらくわたしのおしゃべりは自衛のために身についたスキルなのかなと思っています。


では父もおしゃべりなのかというと全然そんなことはなく、基本無口でそんなにしゃべる人ではありません。
もちろんまったく話さないわけではないのですが、話題を振ってきたり会話を盛り上げて楽しむという感じではなく、聞かれたら答える的なそんな人でした。

だから積極的にわたしに何かをしろということはありませんでしたし、わたしが何かをして怒られたり褒められたりということもほとんどありませんでした。とは言っても無関心というわけでもなく、わたしのやっていることは極力受け止めてくれていたような気がします。


そんな父が一度だけわたしに「こうして欲しい」と意見をしてきたことがあって、そのことがいまでも忘れられずにいます。


あれは高校3年のことだと記憶していますが、わたしが学外模試を受けに行った帰りに父がめずらしく車で迎えにいくといってくれました。模試をやっている秋田市から我が男鹿市までは電車で1時間+運賃が470円と、時間がかかる上に結構お金がかかるということもあってたいへんうれしかったことはおぼえています。

しかも男鹿線って一時間に一本しかないんですよね...。


試験終わりに電車を待ち続けるのもしんどいので二つ返事で迎えにきてもらうことにして、試験が終わってから近くで待ち合わせをして帰ってきました。


車に乗ってやや走ると、父がなにやら言いたげな感じでこちらをちらちらとみてくるのでどうしたのか聞いてみると「大学は県内の大学に行って欲しい」という話をしだしたのです。正直かなり驚きました*1


ここに至る経緯を簡単にまとめると、高校生の頃、わたしは数学と物理が大好きでして、この2教科だけは毎日欠かさず勉強をしていました。勉強していたというと違和感があるというか、単純に問題を解いたり教科書を読むのが楽しかったのでやっていたというのが一番しっくりくるんですよね。


そんな状態でしたので、大学は数学科でも物理学科でもいいのでとにかく理学部のある大学に進もうと思っていました。

ところが秋田県には理学部のある大学はなく、理系だと秋田大学の工学部(当時は鉱山学部という名前でした)しかありませんでしたので、必然的に県外の大学に行く前提でいろいろと考えていたし、そのことは家族にも話していました。


いままで、父がわたしの選択肢を狭めるようなことは一度も言ったことがなかったのでかなり戸惑ったのですが、とりあえず自分の希望をあらためて話して県内の大学に行くつもりはないことを伝えたのです。


ところがめずらしく父は引き下がらず、「車を買って家から大学に通うのもいいんじゃないか」とか「一人暮らしは寂しいぞ」と手を変え品を変え、秋田に残ることをすすめてきたのです。そのひとつひとつにノーを突きつけていたら、父は「そっか」とだけ言ってもう秋田に残るようにいうことはありませんでした。


結局、父の言葉に従うことはなく山形の大学に進んだわけですが、いまだにあのときの父の本意について考えることがあります。最初は「学費を払いつつ仕送りをするのはしんどい」からかなと思ったのですが、「離れて暮らすことになるのがさみしかったんじゃないか」なんてことも理由として思い浮かんだりしたのです。


なんて、父本人とは一度もこの話をしたことがないので本当のところはいまだにわからないんですけどね...。


ただ、最近ふと思ったのは「一人暮らしをしたら秋田にはもう戻ってこないんじゃないか」と思ったからじゃないかなと確信するようになりました。そう確信した理由はうまく説明できませんが、わたしにも子どもが生まれて親になり、そして私自身が年を重ねて当時の父の年に近づいたからかなと思ったりしています。

根拠はないですけど。


不思議なことに日頃からくりかえし言葉を交わしていた母との会話はなにひとつ覚えていませんが、普段寡黙だった父とかわしたあの数回の会話だけはどうしても忘れられずに、たまに思い出してはその真意について想いをはせずにはいられなくなります。

*1:あまりに驚いたので15年経ったいまでも覚えているわけですw