天才的な形成外科医のロベル(アントニオ・バンデラス)は、画期的な人工皮膚の開発に執念を燃やしていた。彼は、かつて非業の死を遂げた最愛の妻を救えるはずだった“完璧な肌”を創造することを夢見ていた。あらゆる良心の呵責を失ったロベルは、監禁した“ある人物”を実験台にして開発中の人工皮膚を移植し、亡き妻そっくりの美女を創り上げていくのだった。愛する妻を亡くした形成外科医が及ぶ究極の行為を愛と呼ぶことができるのだろうか――。
『私が、生きる肌』作品情報 | cinemacafe.net
MOVIX宇都宮で観てきました。
「体にピタリとフィットした肌色の全身タイツ」という、悪い冗談としか思えないようなかっこうをさせられた超絶きれいな女性が、豪邸の一角で監視下に置かれながらかくまわれているというよくわからない状況から始まった本作ですが、冗談抜きですばらしかったです。
↑こんな格好させられてるし...
上述のとおり出だしから気になることだらけの本作ですが、観始めてしばらくは「かくまっている医師やかくまわれている女性はいったい何者なのか?」「そもそもなぜ彼らはこんな生活を続けているのか?」といった具合に謎が謎を呼び、次から次へと気になることだらけになっていくのですが、この飽きさせない、興味を惹きつけてやまない語り口がまたすごくおもしろいのです。
ところどころで謎の一部に対する答えを仄めかしたかと思えば、間髪おかずに新しい不定要素を投げ込んで物語の中に一定量の分からないことを残すようにしているんですよね。
そのようにすることで、常に深い霧の中を歩かされているような、言い換えれば先が見えない状態で目的地も分からずに歩かされているような、そんな不安と気持ち悪さをずっと抱えながら物語に引きこまれてしまったのです。
先行きの不透明さに対する不安感や、全体を俯瞰できないがゆえに不安を覚えるというところが、どこか「ミスト」をほうふつとさせられました。全然違う話なんだけど。
そしてもうひとつ。
ストーリー本編の内容についてですが、まあ何でそんなことしちゃったの??と言いたくなるくらい、圧倒的な変態さんのお話でして、これはもう断然おもしろかったです。何を書いてもネタバレになるのであまり詳しくは書けませんが、結末だけみれば常軌を逸しているとしか思えない事態なのですが、その最後にいたるまでの個々のエピソードだけ見ればそれほどおかしくないんですよね。
誤解を恐れずに言えば、そこに至るひとつひとつのエピソードにはわたしは違和感をおぼえなかったのです。
正しいと思って取った行為の積み重ねが異常な結末につながるということに、少々困惑してしまいました。
あと、先日読んだ「モンスター」という本の感想にも書いたのですが、外見が他者におよぼす影響というのは非常に大きく、おそらく多くの人が理屈として理解している以上にその影響を受けてしまうんだなということをしみじみと思い知らされたのでした。
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