「ラン」読んだよ


ラン (角川文庫)

ラン (角川文庫)

9年前、家族を事故で失った環は、大学を中退し孤独な日々を送っていた。ある日、仲良くなった紺野さんからもらった自転車に導かれ、異世界に紛れ込んでしまう。そこには亡くなったはずの一家が暮らしていた。やがて事情により自転車を手放すことになった環は、家族に会いたい一心で“あちらの世界”までの道のりを自らの足で走り抜く決意をするが…。哀しみを乗り越え懸命に生きる姿を丁寧に描いた、感涙の青春ストーリー。

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9年前に死んでしまった家族と会うために、40kmの道のりを走れるよう努力する女性の姿を描いたお話でしたが、大変おもしろかったです。死後の世界に走っていくという設定には一片のリアリティもないのですが、環を取り巻く人たちの人間臭さや起こる出来事の生々しさはこの物語をフィクションとして読むことを許してくれず、わがことのように親身になって読み進めてしまいました。


いつも手から砂がこぼれるようになすすべなく大事な人を失ってきた環が、今度は自らの力で大事な人とつながろうと努力するところがとてもジンときました。前から「走ることと生きることは似ている」と思っていたのですが、まさにそのつながりというかリンクを物語として体現しているすばらしい作品でした。


森さんの本はどれも好きだけど、また大好きな本を見つけてしまいました。超傑作!