「捜査官X」見たよ


ある山奥の村で、強盗殺人事件の犯人2人が謎の死を遂げるという事件が起きた。捜査官シュウ(金城武)はその犯人たちが指名手配中の凶悪犯であること、そして、製紙工場に勤める職人リウ(ドニー・イェン)が偶然事件現場に居合わせ正当防衛の末、犯人を倒したことを知る。シュウは捜査を進め、リウが意図的に致命傷を負わせたのではないか、と疑念を抱く。超人的な知識・直感・想像力を駆使し、難事件解明に挑むシュウが導き出す驚愕の真実とは――。

『捜査官X』作品情報 | cinemacafe.net

TOHOシネマズ宇都宮で観てきました。


公開直前まで宇都宮で上映されることを知らなかったくらいノーチェックでしたが、宇都宮でドニー・イエンの出演作品を観られるなんて滅多にないことなので喜び勇んで観てきました。ドニーさんを映画館で観たのは「孫文の義士団」以来でしたので、もう本当に期待しまくって観に行ったのですがすばらしい傑作でした。

なにに分類したらいいのかわからないノージャンルな内容や最後までオチの読めないスリリングな展開、そしてアクションシークエンスの出来のよさなどなどとにかくすべてが気に入りました。すごくよかったです。


さらに、この作品にはドニーさんだけでなくわたしの大好きな金城武も出ていたのですが、諸葛亮孔明役で出ていた「レッドクリフ」よりも登場時間はたいへん長かったので、彼の雄姿を思う存分堪能できました。メガネ姿もかっこよくてかなり満足しました。


さて。
観終わってから、いつもどおり感想を書こうとあれこれ考えて書いてみたのですが、何度書いてもしっくりこなくて書いては消して、消しては書いてをくりかえすばかりでなかなかアップできませんでした。感想が書けないというのはさほどめずらしくもないのですが、それにしてもこれだけ気に入った作品なのに感想がまとまらないというのはあまり無いことでちょっと戸惑ってしまいました。


で、昨日走りながらなんでだろう?と考えていたら、ふと先日読んだ「モダンタイムス」という伊坂幸太郎さんの本のあるシーンを思い出しました。以下にその部分を抜粋しますが、要は「何かを要約すると大事なものは消えてしまう」ということを述べたシーンです。

「あのな。大事なことは、まとめちまったら消える。俺はそう言っただろ。でな、それを突き詰めるとだ」彼は芝居がかり、間を空けた。
「突き詰めると?」
「人生は要約できねえんだよ」
私は、その場の快楽と思いつきでのみ行動しているような井坂好太郎から、「人生」という単語が出てきたことに衝撃を受けた。「人生を要約?」

「人ってのは毎日毎日、必死に生きているわけだ。つまらない仕事をしたり、誰かと言い合いしたり。そういう取るに足らない出来事の積み重ねで、生活が、人生が、出来上がってる。だろ。ただな、もしそいつの一生を要約するとしたら、そういった日々の変わらない日常は省かれる。結婚だとか離婚だとか、出産だとか転勤だとか、そういったトピックは残るにしても、日々の生活は削られる。地味で、くだらないからだ。でもって、『だれそれ氏はこれこれこういう人生を送った』なんて要約される。
でもな、本当にそいつにとって大事なのは、要約して消えた日々の出来事だよ。子供が生まれた後のオムツ替えやら立ち食いソバでの昼食だ。それこそが人生ってわけだ。つまり」
「人生は要約できない」


モダンタイムス(上) 201ページ〜202ページ


大事なことは要約してしまうと消えるというのはすごくわかるし、それと同じで好きなものを見て感じた興奮を言葉という形に置き換えて要約してしまうとその興奮は消えてしてしまっているのかなと思ったのです。そしてもしそうだとしたら、この作品の感想は言葉に置き換えずに自分の中にだけ残しておきたいと思ったのです。


もちろんこれがわたし自身の文章力の問題でもあり、そして映画をそしゃくする力量の問題であることは理解しています。ただ3回ほど書き直してみて、少なくともいまのわたしには自分自身がこれでいいと妥協できるものは書けないことを思い知ったし、それであればあえて拙い言葉を重ねることは止めて、観たときにわきあがってきた気持ちを心にとどめておこうという気分になりました。


なんていうか、そのくらいものすごく気に入ってしまった作品でして、今年観た作品の中でもかなり上位に位置する作品になりそうな気がしています。


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