「少女」読んだよ

少女 (双葉文庫)

少女 (双葉文庫)

高2の夏休み前、由紀と敦子は転入生の紫織から衝撃的な話を聞く。彼女はかつて親友の自殺を目にしたというのだ。その告白に魅せられた二人の胸にある思いが浮かぶ――「人が死ぬ瞬間を見たい」。由紀は病院へボランティアに行き、重病の少年の死を、敦子は老人ホームで手伝いをし、入居者の死を目撃しようとする。少女たちの無垢な好奇心から始まった夏が、複雑な因果の果てにむかえた衝撃の結末とは?

http://www.amazon.co.jp/dp/4152089954

人の死を観てみたいと願う二人の女子高生のひと夏を描いた作品でしたが、とにかく計算に計算を重ねてきれいにまとめられた作品でした。序盤からあちらこちらに伏線が張られていて、それがラストに向けてきっちりと回収されていくところは読んでいてとても爽快に感じました。


ただ、あまりに伏線がきれいに張られ過ぎていたために、中盤に入る前に張られた伏線の意図がほぼ読めてしまったために、回収される後半は単なる答え合わせのようになってしまったのが残念でした。
伏線をもう少しひねるなり、内容をひねらないならもっとオブラートに包んで出してくれたらよかったのになと感じました。伏線の見せ方もその意図もちょっとまっすぐ過ぎたのが物足りなさにつながってしまいました。


「人が死ぬところを見てみたい」「死体を見てみたい」という"死に興味をもつ子どもたちの姿"というのは、「スタンド・バイ・ミー」や「夏の庭」といった傑作でも取り扱われています。死に興味をもつことは大人になる過程で誰もが一度はとおる道なのですが、では実際に死と向き合ったことでその後どう変わるのか?というところが各作品を特徴づける要素になっています。


本作はそのあたりの表現が少し弱かったかなと感じたのですが、上で挙げたような他の作品と違い、死を知りたがっているのは幼い子どもではなく高校生であることを考えれば、このくらい冷めた感じがちょうどいいのかなとも感じました。