「メランコリア」見たよ


デンマークが世界に誇る鬼才ラース・フォン・トリアー監督の最新作。メランコリア惑星が地球に大接近する世界を舞台に、ある姉妹とその家族の日常を描く。主人公の姉妹を演じるのは、『スパイダーマン』シリーズのキルスティン・ダンストと『アンチクライスト』で2010年度カンヌ国際映画祭で主演女優賞を受賞したシャルロット・ゲンズブール。そのほか、「24 -TWENTY FOUR-」のキーファー・サザーランドシャーロット・ランプリングジョン・ハートなど豪華俳優陣が出演。人間の心理的破局、そして魂の救出を独自の映像で描いた、渾身のSFサイコロジカルドラマ。

『メランコリア』作品情報 | cinemacafe.net

(注意)
本エントリーは作品の内容や結末に触れていますので未見の方はご注意ください。


TOHOシネマズ宇都宮で観てきました。


予告を観てもどんな映画なのかさっぱり分からなくて興味津々でしたが、観た人の感想をうかがうと「おもしろかったけどもう観たくない」だとか「全然意味わかんなかった」という意見が比較的多く、もろ手を挙げて褒める方は結構少ないように見えました。


作品の内容に関する情報は一切入れないようにしていましたが、観た人のざっくりとした感想は多く見てしまったために果たして楽しめるのかどうかものすごく不安でしたが、たいへんユニークな作品でよかったです。
あまりいろんな人におすすめできるものではありませんが、観終えて感じたのは「映画を観た」のではなく「ある出来事を体験した」という感覚でして、実際には映像を眺めていただけのはずなのですが心の底から疲れ果ててしまいました。


さて。
本作のタイトル「メランコリア」というのは直訳するとうつ病のことです。

タイトルと内容の関係についてはとくに説明はしませんが、本作は大きく2つの章(オープニングを別にすると3つかな)から構成されていて、それぞれがキルスティン・ダンスト演じるジャスティンとシャルロット・ゲンズブール演じるクレアそれぞれから観た世界を描いています。


第一章で描かれるのはジャスティンの結婚式ですが、これがもう言葉にならないくらいひどいんですよ...。

自身の結婚式に2時間も遅れて平気な顔をしていたり、さらに遅れてきたのに急ぐでもなく納屋にいる馬に会いにいったり、結婚式を途中で抜け出してゴルフコースのグリーンのうえでドレスを着たままおしっこしたり、突如お風呂に入ってみたり、旦那から体を求められると逃げ出して大して面識のない男性とゴルフコース上でセックスしたり、上司を口汚くなじったりとあまりに破天荒過ぎて現実のできごとなのかと疑わずにいられません。

そんな彼女の行動は一見それぞれにつながりがない衝動的な行動の連続のようにも見えますが、結局のところ周囲に気遣う余裕がいっさいなく自分が沸き起こってくる衝動にしたがって行動しているだけなんですよね。しかもその衝動が性質の悪いモノばかりなのが何とも...。


この章はジャスティンや彼女のまわりの人たちに見えているメランコリックな視界や気分を存分に味わうための章でした。かなり鬱々としちゃったかな...。


そして場面は変わって、第二章はジャスティンの姉のクレアが世界滅亡に瀕する世界を生きるというお話でしたが、こちらはなかなかよかったです。圧巻ともいえるラストもたいへんすばらしかったのですが、それ以上に終末感ただよう雰囲気や個人の死と世界の終わりを対比させたと思われる表現がとても気に入りました。

    • 馬は自分の一部(本人は心で馬は体?)
    • 本人は橋を渡りたいのに馬が橋を渡りたがらないのは心と体が乖離している状態
    • 橋を渡ろうとしない馬(体)をいたぶるのは自傷行為
    • 近づいたり離れたりを繰り返すメランコリアの存在
    • 個人の死は当人にとっては世界の終わりと同じ


あとなんだっけな。もっとたくさんあったと思うのですが忘れちゃいましたが、とにかく観るシーン観るシーンすべてにいろいろな発見があってラストまでまったく興奮がおさまることはありませんでした。と言ってもまだまだ何だか分からない部分というのもたくさんあって、例えばジョンは家のゴルフコースは18番までしかないと言っていたのに19番ホールの旗が立っていたところなど気になる要素がまだまだ残っています。
時間的にも精神的にも厳しいような気はしますが、出来ればもう一度劇場で観てみたいなと思いますし、劇場の音響設備があってこその作品ですので劇場で観なければもう二度と観ることはないだろうなという気がしています。


とりあえず、こういったアート要素の強い作品をシネコンで上映してくれるのはすごくうれしかったし、劇場で観ることができてよかったです。


それと終末感つながりなのか「虹の女神」という映画の中で撮られた自主制作映画「THE END OF THE WORLD」のことを思い出してしまいました。



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