「宇宙人ポール」見たよ


SFオタクのイギリス人、グレアムとクライブは、長年の夢だったアメリカ版コミケ“コミコン”と、アメリカ西部のUFOスポット巡りを満喫していた。しかし、ネバダ州の“エリア51”を通りかかったとき、ポールと名乗る本物の宇宙人と遭遇。なぜか彼を故郷に返すために奮闘する羽目になる!

『宇宙人ポール』作品情報 | cinemacafe.net

宇都宮ヒカリ座で観てきました。


アメリカにオタク旅行に出かけたSFオタクの二人組が、その道中で宇宙人と遭遇して彼をある場所まで送り届けるという設定だけで笑ってしまいそうなコメディなのですが、設定も演出もたいへんおもしろかったです。宇宙人であるポールの行動や発言があまりにバカバカしくて思わず笑ってしまったり、かと思えばいかにも宇宙人らしい能力を発揮して驚かせてみせたりと、さまざまな方向に心が動くように揺さぶりをかけてきたところがとても気に入りました。


そして本作はコメディという一面とは別に、ロードムービーとしての一面ももっていたのですがこれがまたすごくよかったです。もともとわたしは「仲が良くない人同士が同じ時間を共に過ごすことで仲良くなっていく」という話が好きでして、本だと恩田陸さんの「夜のピクニック」や「まひるの月を追いかけて」は大好きで繰り返し何度も読むくらいこよなくあいしています。

そしてロードムービーはまさにそんな物語になることが多いジャンルでして、お互いに理解しあうことがむずかしい立場にある二人が旅をとおして仲良くなる的な展開で楽しませてくれるのです。最近観た作品だと「デュー・デート」や「リトル・ミス・サンシャイン」なんかがそんな感じでして、両作品ともに価値観がずれまくりの人たちをいっしょに旅させてそれが徐々に溶け合っていくプロセスを存分に楽しませてくれました。

そういった視点で考えると「分かり合えない他者」として宇宙人をチョイスした時点で設定はパーフェクトであり、つまりはこの作品がおもしろかったのは設定の勝利だったといってもよいのではないかなと。そして寝食や道中の移動を共にすることで徐々にお互いのことを受け入れていく様子が本作ではとてもうまく描かれていて、その設定を活かしきった内容となっていてとてもおもしろかったです。

ちなみにわたしがこの作品でいちばん好きなのは、ホテルに泊まった二人のとこにルームサービスのピザをもってきたボーイに対して熱っぽく宇宙人の話をするけどかみ合わないシーンです。Alienと言う言葉が外国人と宇宙人という二つの意味を指すことによる両者のやり取りのすれ違いがすごくおかしかったんですよね。


コメディとしても、ロードムービーとしても満足できるすてきな作品でした。


ちなみに本作は昨年9月に開催されたしたまちコメディ映画祭で上映されて大好評を得て、さらに12月にロードショーが始まってからもよい評判ばかりが聴こえてきた作品でして、観る前に入ってきた前評判の良さという点においてはここ数年でもっとも高い作品でした。そういった意味では観る前からかなりハードルはあがっていたのですが、それを十分に満たしてくれたというだけでもすごい作品だなと思います。


(関連リンク)


公式サイトはこちら