海の先にぽっこりと浮かぶ島。その島には太古から化け物が住むと言われ、人はそこを「もののけ島」と呼び恐れていた。病の母親のため、珍しい茸を採りにこの島に忍び込んだ人間の兄弟。しかし、弟・コタケが取り残されてしまい、もののけ島の長老によって人質にされてしまう。実はもののけたちも人間が襲ってくるのではないかと、おびえながら暮らしていたのだ。コタケの面倒を見るよう命じられた赤おに“ナキ”は、 唯一の親友である青おに“グンジョー”と共にコタケとの共同生活をはじめる。やがて、ナキはコタケを母親のもとに返すことを決意し送り届けたものの、“もののけ”を恐れる村人たちからは乱暴に追い払われ、コタケとは二度と会えなくなってしまい…。
『フレンズ もののけ島のナキ』作品情報 | cinemacafe.net
秋田県には"なまはげ"という伝統行事があります。
地味に有名なので知っている人も多いかと思いますが、秋田県の中でも男鹿市というところがなまはげ発祥の地と言われておりまして、わたしの生まれ育った市でもあります。なまはげ発祥の地というだけあって、なまはげはとても身近な存在でして日常に密接した存在だったのです。
どのくらい身近なのかというと「高校生のときの冬休みのアルバイトはなまはげの中の人」だとか、最寄りの本屋さんの名前が「ブックスなまはげ」というくらい日常にありふれているのです。あと「ブックスなまはげ」が多角化経営に乗り出して「なまはげラーメン」を始めたことがありましたがそちらは3,4年で無くなってしまいました。
そうそう。さらに最近は実家の近くにこんな巨大ななまはげの像が作られました。
↑これマジでデカいんですが、その分かりやすさも手伝ってか行くたびにいつも誰かこの像の前で写真撮ってます。
さて。こういった郷土に伝承されるお話には必ずその由来のようなものがあるのですが、ではなまはげは一体何に由来して出来た話なのかというとこれは諸説あるようです。そしてその諸説の中でわたしがもっとも信頼している説は「流れ着いて住み着いたロシア人説」なのです。
御存じのとおり秋田は日本海側に面しているのですが、海岸を歩くとハングル、簡体字などのゴミが多く流れ着いていることに気付くのです。どこから流れ着いたのかは分かりませんが、海のどこからか捨てられたものがたどり着く場所になっているようです。
そんなわけで漂流したロシア船が男鹿半島に流れ着き、そして帰れなくなって住み着いたのがなまはげであるという説なんですね。いまのように外国人が珍しくない時代ならともかく、誰も日本人以外見たことのない何百年も前の昔だったら、日本人よりも圧倒的に体格がよくて赤毛っぽい髪やひげをのばしまくっているロシア人をみたら驚いてしまうのもやむを得ないと思います。
ちなみに、なまはげは赤い顔をした赤鬼バージョンと青い顔をした青鬼バージョンがあるのですが、「赤鬼はお酒を飲んでる赤ら顔になっている状態」で「青鬼は二日酔いで真っ青になっている状態」だということを聞いた時には、思わず吹き出してしまいました。
まあ、たしかに飲んでなきゃやってられなかったんだろうけどさ...。
話がずいぶんとそれましたが、なまはげというのは結局ロシア人だったというお話なのですが、でもいくら見たことがなかったとは言え、ロシア人を鬼ような存在と誤解した上にそれが何百年も伝承されるということに違和感をおぼえたことがあります。
そしてそれについてなんでだろう?と考えたことがあるのですが、そのときには「意思疎通ができなかったために過剰に恐怖心を抱えあったことが原因」だろうなという結論に達したのです。
話を映画に戻しますが、本作は人間ともののけと呼ばれるものたちの軋轢に端を発する物語でして、相手が自分に怯えているという状況をまったく知らなかったためにずっと互いの存在に怯えあって傷つけあう様子が描かれています。
例えば人間が暗闇を怖いと感じるのはそこになにがあるのかが分からないからであって、暗闇そのものが怖いわけではないんですよね。つまり自分が理解できないものには過剰に恐怖心を抱くのは人間として当然のことでして、そしてそれは原発に端を発する放射性物質に対する人々の反応に顕著に表れています。
先ほどのなまはげの話に戻りますが、結局見た目も自分とはまったく違う上に言葉も通じないとなると、相手の正体や本意がまったく分からず結局不信感や恐怖心を抱くほかないんですよね。そうなると体躯に勝る相手に対して畏怖の念を抱いてしまう気持ちもよくわかるし、いざとなると過剰に相手に攻撃的になってしまうのもよく分かるんですよね。
だって怖いんだもん。
さっきから何度も話が映画から飛んでしまっていますが、本当の姿の見えぬ他者に恐怖心を抱いてしまうところやその恐怖心が相手への攻撃に転化される部分がこの作品ではとてもうまく描かれていたと感じました。
そして相手が決して自分に害をなす相手ではないということを知って行くプロセスも原作に沿って丁寧に描かれていて、とてもグッとくる出来となっていました。香取君が声優をやっているということで、正直ちょっと地雷臭がするなーなんて偏見をもっていたのですが、全然そんなことはなくてとてもよい作品でした。
とてもおもしろかったです。
ちなみにこの作品とはびた一文関係はありませんが、漂流モノでわたしが一番好きなのは高校生の時に読んだ「海嶺」という作品です。「塩狩峠」を読んで以来、三浦綾子さんの本が大好きだったんですよねー。たぶん出ている本はほぼすべて読んでると思いますが、その中でも特にこれはお勧めです。
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