「ロスト・イン・トランスレーション」見たよ

ロスト・イン・トランスレーション [DVD]

ロスト・イン・トランスレーション [DVD]

日本のウィスキーのコマーシャルに出演するために来日したハリウッド俳優、ボブ・ハリス。異なった都市で言葉も通じず孤独を感じていた。同じホテルに滞在していたシャーロットは結婚したばかりだが、写真家の夫は仕事に忙しく、ボブと同じように孤独であった。二人はホテル内で顔を合わせるうちに親しくなっていく。

ロスト・イン・トランスレーション - Wikipedia


目黒シネマで「〜ソフィア・コッポラの世界〜」という企画で「SOMEWHERE」といっしょに上映されたので観てきました。


仕事で日本にやってきたいい年したおっさん「ボブ」と、旦那の仕事についてやってきたうら若き女性「シャーロット」。
偶然同じホテルに泊まっていて顔を合わせるようになった二人が徐々に仲良くなっていく...という、ストーリーをまとめるとたったこれだけなんですがこれがまたびっくりするくらいおもしろかったです。
途中、途中に差し込まれるシュールで思わず笑ってしまうようなくだらないシーンや、違和感たっぷりな日本の姿が描かれたシーンには嫌というほど笑わせてもらいました。全体的に抑揚が抑え気味でしたが、その中にこういった笑いがバラバラと散りばめられていたことでそれがほどよいアクセントとして効果的にはたらいていたようにも感じました。


で、この作品でおもしろいと感じたのはボブとシャーロットの関係に関する描写です。

どうにも慣れない異国の地で寂しさに首からひたひたに浸かって参ってしまったボブとシャーロットの二人は、昼夜を問わずあちこち遊びまわったり一緒にご飯を食べに行ったりしながら肉体的にも精神的にもその距離をグッと縮めます。そのうち朝までフラフラと遊びまわったり、そのあと部屋まで送ってもらってベッドの上で一緒になって寝ちゃったりするわけですが、それでも二人はある一線を越えることはないのです。結局ボブとシャーロットはありふれた男女の関係に行きつくことなく、ドロドロした世界とは無縁のものすごくきれいな場所に着地するのです。


あんなにかわいくておっぱいの大きいシャーロットとあそこまで仲良くなったのに手を出さないなんて、もしかしてボブは男性としてはもう枯れきっているのか...ということについても大変真剣に検討したのですが、バーで歌っていたおばちゃんとはあっさりと寝てしまったために、その可能性は明確に、そして完全に否定されます。ボブは女性への興味がないわけではないし、さらにシャーロットに対して女性としての魅力を十分すぎるくらいに感じているように見えるのですが、なぜかあと一歩踏み出すことを躊躇しているんですよね。まるで大事な宝物を壊したくないと思っているかのように、特別大事に扱われているようなそんな印象を受けたのです。


これについては観ていたときには自分の中では答えが出せなかったのですが、観終えてから「これはソフィア・コッポラの自伝らしい」なんて話を教えてもらい、「自伝だとしたらこういう話として描きたくなる気持ちも分かるなー」と腑に落ちたような気がしました。


というわけで、わたしはとてもおもしろかったしものすごく大好きな作品でしたが、最初に書いたとおり、結局この作品はストーリーだけみればほとんど何も起きてないに等しい作品でして、そういう視点で考えれば「SOMEWHERE」とさほど変わらない作品なんだなーということにあとから気付かされたのでした*1

*1:時系列で考えれば「SOMEWHERE」が「ロスト・イン・トランスレーション」と変わらないという言い方が正しいのかも知れませんが