「儚い羊たちの祝宴」読んだよ

儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)

儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)

ミステリの醍醐味と言えば、終盤のどんでん返し。中でも、「最後の一撃(フィニッシング・ストローク)」と呼ばれる、ラストで鮮やかに真相を引っ繰り返す技は、短編の華であり至難の業でもある。本書は、その更に上をいく、「ラスト一行の衝撃」に徹底的に拘った連作集。古今東西、短編集は数あれど、収録作すべてがラスト一行で落ちるミステリは本書だけ!

http://www.shinchosha.co.jp/book/301472/

本書はついつい結末や謎について予想したくなる短編5編を集めた短編集ですが、そのいずれも大変おもしろかったです。個人的には「玉野五十鈴の誉れ」が一番好きでして、ここだけ何度か繰り返し読みました。こういう話、好きだなあ。
どの物語もものの見事に読者の期待や予想をことごとく裏切ってくれて、その意外性と思い切りの良さは読んでいて大変気持ちがよかったです。


ただ、この煽り文句である「ラスト一行の衝撃」というのは正直それほどでもないな....と。
そもそも作品全体を俯瞰してみても、オチが印象的というのは評価ポイントのひとつではあるかもしれませんが、でもそこがもっとも大事な作品ばかりでもないと思います。掴みというかとりあえずは手に取ってもらうことが大事だとは言え、過度にどんでん返しに比重を置かれ過ぎるとこの作品のよさが見えにくくなるんじゃないかという気がします。


少なくとも上で挙げた「玉野五十鈴の誉れ」については、結末よりもそこに至るまでの経過やその描写がとても魅力的な作品でした。