「8年」読んだよ

8年 (集英社文庫)

8年 (集英社文庫)

オリンピックで華々しい活躍をし、当然プロ入りを期待されたが、ある理由から野球を捨ててしまった投手・藤原雄大。8年後、30歳を過ぎた彼は、突然、ニューヨークのメジャー球団に入団する。あの男ともう一度対戦したい!その悲願のためだけに…。一度は諦めた夢を実現するため、チャレンジする男の生き様を描くスポーツ小説の白眉。第13回小説すばる新人賞受賞作。

http://www.amazon.co.jp/dp/4087745066

わたしが大人になってから知って驚いたことのひとつに「スポーツ選手の選手生命の短さ」が挙げられます。
どんな競技でも一線で活躍できる時間はとても短く、10年もトップを維持することができる競技/選手はほとんどありません。肉体的なピークもあるでしょうし、精神的にそういった厳しい環境でやっていける時間はそれほど長くないということなのかも知れませんが、ハードな世界だなということは常々感じています。
たとえば、わたしは中学と高校で柔道をやっていたのでいまでも柔道の情報は追っかけているのですが、オリンピックで金メダルを取った選手が次の世界選手権には出られなかったり、出てもまったく勝てなくなったりということもめずらしくはありません。


そういった意味では選手としてのピークというのはとても短く、そのピーク時期の一年や二年というのは他の時間とは替えのきかないとてつもなく大きな時期だと言えるわけですが、本作が扱うのはその替えのきかない大事な時期を家族のために失ってしまったと思っている投手の物語でして、とても読み応えのあるよい作品でした。


大事なものを得るためには何かを失うことを覚悟しなければならないとはよくいいますし、わたしも頭では理解していたつもりなのですが、でも実際にその立場になってみると100%そのことを受け止めて納得することは難しいんですよね。もう取り戻せないくらい大事なものだからこそ、それを手放してまで得たいと思うモノに価値が宿るのだと思うし、そういう覚悟をしておくためにも自分にとって一番大事なものがなんなのか?ということはちゃんと考えておかないといけないなという想いを新たにしました。