「さよならの余熱」読んだよ

さよならの余熱 (集英社文庫)

さよならの余熱 (集英社文庫)

一緒に暮らす恋人に、最近わたしはすぐに苛立つ。好きなのに、優しくしたいのに、彼を追い詰める言葉ばかりが溢れ出し―(「つまらぬもの」)。退屈な日常を変えて欲しくて、会社員の芹澤さんと付き合い始めた。でも、高校で援交の噂を立てられて…(「暮れていくだけ」)。甘やかな恋心は、いつしか胸をしぼる切なさに形を変える。恋の至福ととまどいをひたむきに描いた全9話、文庫オリジナル。好評『ハニービターハニー』に続く第2弾。

http://www.amazon.co.jp/dp/4087466507

基本的に恋愛小説はすごく苦手で、特に女性視点のものは大抵最後まで読まないか、ななめ読みしておしまいにしてしまいます。
その理由について以前考えたことがあるのですが、ひとつは「すっぱい葡萄」という寓話そのものでして、つまりわたしもこんな甘美な経験をしてみたいと思ってるのにそれとまったく関われない悔しさに耐えられないという理由が考えられます。結婚してからはそうでもなくなりましたが、モテない不遇な青春を絶賛実践中だったわたしには恋愛小説なんて目の毒としかいいようのないものでした。好きだとかなんだとか言ってさっさとすることをしちゃうところとか、「浮気しちゃった、テヘ」とかもうすごい腹が立ってしょうがなかったのです。
自分が蚊帳の外にいるようにしか感じられない物語も辛いじゃないですか...。


それと、もうひとつは女性視点の恋愛小説って大抵男が見限られたり愛想を尽かされたりするものが多いような気がしていて*1、読んでるだけで自分の男性性を完全に否定されているような気になってしまってものすごく悲しくなります。おまえ打たれ弱すぎるだろ...と呆れられるかもしれませんが、でも後日とつぜん思い出してブルーになったりするのがどうも嫌なのです。


そんなわけで恋愛小説はほとんど読まないのですが、ナツイチとして挙がっている作品であれば話は別でして本作は「ナツイチだから」というただそれだけの理由で読んでみました。


さて。本作は9編からなる短編集ですが、それぞれがまったく独立しているわけではなく、登場人物や場面が緩やかにつながりをもって語られています。その物語同士のつながりは決してつよく主張されることはありませんが、でも確実に物語に奥行きを与える役割を担っていて、例えつまらなくて全然おもしろくない話であってもその奥行きが物語を楽しめるのりしろとなって活躍してくれたのです。
恋愛小説をこんなに楽しく読んだのはとてもひさしぶりでした。すごくよかった!


あと、この作品の中で「暮れていくだけ」とか「タイミング」といった浮気に関する話を読んでいたら、前に映画館で思いついてすっかり忘れてたトピックを思い出したので近々そのエントリーをあげようと思います。

*1:具体的な作品名を挙げたくて思い返してみましたが、いまのところ思い出せず...