昭和40年代、東京の下町で殺伐とした生活を送る矢吹丈(山下智久)は、元ボクサー・丹下段平(香川照之)に出会いボクサーへの道を志す。しかし、問題を起こした丈は少年院へ。そしてチャンピオンレベルの力を持つプロボクサー・力石徹(伊勢谷友介)と運命の出会いを果たす。一足先に少年院を出た力石は、連戦連勝、エリート街道をひた走る。一方の丈は、段平と二人三脚の特訓を行い、「クロスカウンターパンチ」を得意とする人気ボクサーへ成長していた。2人はやがて同じリングを上がる運命の日を迎える――。ちばてつやの不朽の名作コミックを実写映画化。監督を務めるのは、『ピンポン』の曽利文彦。
『あしたのジョー』作品情報 | cinemacafe.net
TOHOシネマズ宇都宮にて。
この作品が実写で映画化されると初めて聞いた時、これは危険だと思い、そしてキャストを聞いたわたしは「これはいよいよ地雷作品になるぞ」と思っていました。その後も出てくる情報はいずれも作品に対する負の期待を煽るものばかりでしたので、果たしてどういう作品になっているのか気になって夜も眠れないほどでした(嘘)。
そんなわけで、ぶっちゃけ怖いもの観たさで観に行ったのですがこれがもうすごく面白かった!
本物のボクサーさながらの体を作り上げた主演両名の意気込みもすごく伝わってきたし、何よりも伊勢谷君は役作りにかける執念が全身からにじみ出ているように見えるくらいでした。よく役作りという言葉が使われていますが、これほどわかりやすい例は無いんじゃないかというくらい役を演じるために体を作り込んでいるのが感じられて、その本気さにうたれた私は観ている最中、ほとんど言葉が出ませんでした。
本当にすごいと思うものを観た時には、感嘆の言葉すら口をついて出ることはないというのをこの作品を観てよくわかりました。
本作を観て感じたのは、情熱を傾けられるものを見つけることの大切さです。
最近よく耳にする言葉のひとつに「草食系」というのがありまして、これは何事にもガツガツしてない人を形容する言葉として使われます。わたし自身が草食系かどうかはさておいても、あまり物事に対して貪欲に取り組むと言うタイプでもありませんので「ガツガツしない姿勢」にはかなり共感を覚えますし、そういう省エネな生活スタイルというのも悪くないと思います。
ところが、そんなふうに日々を過ごしてしまうと、ふとした瞬間に自分の歴史を振り返ってみた時にものすごい脱力感を覚えることがあります。私が10代の頃に思い描いていた30代って、いろんな経験を積んでいる上にものすごいスキルも手に入れていて、そういう能力を武器にバリバリ仕事をしている超かっこいい大人だったはずなのですが、30歳を過ぎても特段何を為したわけでもなく、とりわけ誇れることのない毎日を過ごしちゃってるわけです。
結局、わたしは何にも情熱を傾けず毎日を無為に過ごしているんですよね....。
そんな私が最近ふと思いついたのが、人間にとって最も大事な財産は時間なんじゃないかということです。
自分が情熱をぶつけられるものを見つけて時間と言う財産をつぎ込む。それこそが生きていることを楽しむ唯一の方法なんじゃないかなと思うようになったのです。別にガツガツしてなくてもいいから、目的ややりたいことをもってそれに思う存分時間やリソースをつぎ込める人が幸せな人なんじゃないかなと。
ジョーも力石も周囲からはなぜそこまで一人の相手にこだわるのかまったく理解されませんでしたが、でも情熱をぶつけたい対象がいるというのはそれだけ幸せなことだとわたしは感じたんですよね。特に力石のジョーへの執着は、まさに自分の人生をかけてぶつかっているように感じられてすごくグッときました。
原作を読んだことのない私は、果たしてこの作品がどこまで原作を正しく映像化出来ているのか分かりません。
ただ、ひとつの映画として非常に熱くこみあげてくるものを感じさせるすばらしい作品だったということだけは間違いなく言えます。
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