「チェブラーシカ」見たよ


オレンジの木箱に入っていたのは、茶色くて、耳は大きいのに尻尾は短い不思議ないきもの。倒れてばかりなので、“チェブラーシカ(バッタリ倒れ屋さん)” と名付けられる。ひとりぼっちのワニと友達になったチェブラーシカ。心優しい2人とたくさんの仲間との出会いの中で繰り広げれられる心温まる物語――。ロシアで最も愛されている人形童話「チェブラーシカ」最新作の映画化。『くまのがっこう 〜ジャッキーとケイティ〜』と二本立てで上映。

『チェブラーシカ (2010)』作品情報 | cinemacafe.net

TOHOシネマズ宇都宮にて。


かわいいキャラクターたちがとても印象的でしたので、存在だけは認知していましたが、このたび初めて映画でその物語を堪能してきました。結論からいうと予想していた以上にキャラクターもストーリーもユニークで非常に面白かったです。
この作品が2010年最後の劇場鑑賞作品でしたが、傑作の多かった2010年の締めくくりにふさわしい作品でした。


この作品を観て一番驚かされたのは、チェブラーシカは正体不明の動物であるという点です。
観る前は猿とかオラウータンとかその路線の動物だと思っていたのですが、作中でチェブラーシカが住む場所がないので動物園に連れて行かれるシーンがあり、そこで「こんな動物は観たことないからどの檻に入れていいか分からない」という理由で入ることを断れるシーンがありました。
チェブラーシカ」という名前も、"ばったり倒れる"という発見当時の行動を表した言葉でしかないんですよね...。
他の名前もそうですが、全体的にアバウト過ぎるw


もちろんキャラクターが実在の動物である必然性なんてまったくありませんし、名前の由来だって積極的にロシア語の意味を調べなければ分からないんですからいいと思いますし、こういった緩さがこの作品特有のユニークで暖かい世界観を作り上げているんじゃないかと感じました。世界観と言えばワニのゲーナが労働と称して日中は動物園で働いている(見世物になる)くだりや、未知の生物であるチェブラーシカがサーカスのオーディションに自ら足を運んでいるのに芸が出来ないという理由で採用を見送られたりするというあたりのおかしさに壮大に吹きだしてしまいましたが、そういったおもしろさがミルフィーユのように積み重ねられて作品が構成されていました。
ささやかなところにも漏れることなく、すべての設定・出来事がこの世界観を作り上げるファクターとしての役割を担っていることに非常に感心させられました。


さて。
本作を観ていてつよく感じたのは、人と人*1の間で交わされる会話の大半は常に肯定をベースに受け答えがされているということです。特にゲーナとチェブラーシカの間でそれが顕著だったのですが、どちらかが発した言葉を頭から否定することはせず、まずは肯定して会話をすすめていたのです。
そのやりとりが観ていてとても安心できるというか、一般的には相手の意見を否定してdisりあっている方が客観的に観る立場にある者としてはおもしろくいのかもしれませんが、そうではなくて、あくまで友だちの意見はいったん肯定して受け止めることを是として表現しているところにとても好印象を受けたのです。


チェブラーシカがやってきた街は「友だちのいない人ばかりの街」だそうですが、そんな人と人のつながりが極端に弱い場所において、赤の他人である誰かと仲良くなるためにはそういった会話が大事だということを主張しているように感じたのです。
ささやかですが、そんなところにとても好感を覚えたのでした。


公式サイトはこちら

*1:厳密に言えば動物もいるので人と人ではないのですが