- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2010/04/21
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1947年、銀行員として成功していたアンディ・デュフレーンは、妻とその愛人を射殺したという罪で終身刑2回という判決を受け、ショーシャンク刑務所に投獄される。刑務所が持つ異質な雰囲気に初めは戸惑い孤立するアンディであったが、決して希望は捨てず、明日の自由を信じ続ける。
ショーシャンクの空に - Wikipedia
(注意)
本エントリーでは作品の内容や結末にかかわる部分についても記述があります。未見の方はご注意ください。
TOHOシネマズ宇都宮にて。午前十時の映画祭にて鑑賞(28本目)
高校生2年か3年生の時。当時クラスには仲の良い友だちが3人いたのですが、そのメンバーで集まって夜通し遊ぼうということになりました。
性青春まっさかりの色ボケした野郎どもが集まるわけですからいったいどうなってしまうのかとても楽しみにしていたのですが、いざ当日になって何をして盛り上がろうかと話し合った結果、観たいビデオを借りてきてみんなでそれを見ようということになりました。もっとすごいナイトを想像していたわたしには残念に感じられましたが、わたし以外のメンバーは普段から映画が好きでいろんな映画を知ってたのでそれを考えると妥当なところに落ち着いたと言えます*1。
で、それじゃあ映画は何を観ようかとみんなで話し合ったのですが、その結果選ばれたのは「バタリアン」と「ショーシャンクの空に」の2本。「ショーシャンクの空に」はみんなの意見が一致して選ばれたもので、「バタリアン」はあまり映画を観ないわたしでも楽しめるようにと気遣ってくれたチョイスでした。いま思うとこのチョイス、すごくいいです。
結局、バタリアンは最後まで観たのですが、ショーシャンクの方は始まって数分で寝てしまい、目が覚めた時にはエンドロールが始まったところでした。元々、映画にはあまり興味がなかったというのもありますが、日中から興奮してはしゃぎ過ぎてたせいでかなり疲れていたんですよね...。そんなわけで「ショーシャンクの空に」は既にビデオで睡眠学習済みではありますが、ちゃんと観るのは今回が初めてでした。
わたしの周りではこの作品をオールタイムベストに挙げる人が結構多かったので、いつか観たい観たいと思っていましたが今回やっとその願いがかないました。
午前十時の映画祭は本当にすばらしい企画です。
と、長い長い前置きが終わったので今回の鑑賞をとおしての感想ですが、期待していた以上に濃い作品でした。
世間的には「感動する」という言葉で評価されているのですが、個人的には感動というのとは違うかなと思いましたが、傑作であるということについてはまったく異論がありません。
犯してもいない罪で裁かれて劣悪な環境に追いやられ、自らが手にしていたものすべてを失ってしまったアンディが、それでも生きる望みを失わずに前向きに生きる姿のすばらしさに震えるような感動をおぼえました。こんな絶望的な状況にありながらも、自らの未来を信じて生きるための努力を続けることがどれだけ大変なのかは想像するだけでも伝わってきます。
そしてもう一つ。この作品を観て感じたのは、アンディの行動はまるで生命の誕生のようであるという点です。
「刑務所に閉じ込められていた」アンディは、壁に穴をあけてその穴を抜けてそこから外の世界へと抜け出すわけですが、これは母体で成長した子どもが生れ落ちることと似ています。抜け出したアンディが喜ぶ姿を観ていると、生を受けたことに対する感謝のようにも見えてくるのです。
また、作中でレッドが刑務所の壁を「この壁が最初は憎かったけれど今はこれに守られていると感じる」と言うシーンがあるのですが、刑務所という場所は囚人を閉じ込めているようですが、実際には外界から守る役割も果たしています。
そういったメタファーだと言うつもりはありませんが、ただ作中ではこういった暗喩のような表現がいくつか感じられて、そういった点も作品に奥深さを感じさせる一因となっていたように感じました。
それと、この作品に関する感想をいろいろと読み漁っていて見つけたのですが、「この作品は妻を殺したアンディが人生をやり直す話だ」という意見があることを知ってものすごくびっくりしました。でもたしかにそのとおりだなとも思ったのです。
実際、この作品を観ながらわたしは一度もアンディが妻を殺したと考えもしませんでしたが、でもアンディが本当に奥さんを殺していないどうかということに対する明確な答えってひとつも出ていないんですよね。無意識のうちに、アンディの言葉を信じてしまっていたのです。
でも、ひとたびアンディが本当に殺していたのではないかと考え出すと、かなり初期から脱獄用のトンネルを掘っていたことや周到過ぎるほど周到なやり口。そして彼はその程度のことは自然に考えて行動できるくらいに優秀な人間だという事実も、すべてが彼の思惑どおりだったという方向に疑念をふくらませていくのです。
彼はこの刑務所の中で生きていく中でさまざまなものも手にしていきますが、それと同時に彼はさまざまなものを失ってもいきます。社会的な地位は入ったその時すでに失われていますが、時間やプライドといったものも彼からどんどん奪われていくのです。それでも彼は焦ることなく、淡々と日々を送るわけですが、上述したようにそもそも彼が妻を殺していてこの刑務所での生活に人生の再起をかけていたと考えると、こんなふうに過ごせることも何となく理解できるような気がするのです。
手にあるものを奪われ、失うことは彼なりの贖罪だったのかも知れないし、そうじゃないにしても再起をするためにも一度はすべてを失う覚悟をしていたのかも知れません。
こんなことを考え出すと、そのことを確かめるためにももう一度観たいなーと思い始めたりして、まさに繰り返し観たくなる傑作だなと感じています。
*1:前にどこかでも書いたのですが、わたしが映画をよく見るようになったのは2007年以降でして、それまではほとんど映画を観たことがありませんでした。高校時代は一本も映画館で観ていません。