- 作者: 豊島ミホ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2010/08/20
- メディア: 文庫
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東京で大地震発生―。「その時」露わになる、心の奥底とこれまでの人生すべて。瓦礫の街で芽生えるのは、悲しい孤独?それとも明日を生きるための勇気と希望?25歳の作家が恐れと祈りをこめて描いた、書き下ろし短編集。
http://www.amazon.co.jp/dp/4087753832
東京で地震が起きたら....。
そんな、読む人次第では不謹慎とも受け取られそうなトピックをテーマに掲げた本作でしたが、その意欲あふれるテーマ選びとは対照的にあまり惹かれる部分の無い作品でした。災害によって誰もが自分の命の大事さを思い知り、みな利己的になっていくことその人の核となる人間性が浮き彫りになっていく様子はたしかに面白いのですが、どうもそれぞれの話がペラペラと薄いんですよね。
14話に分割していることで全体としてのボリュームは感じるのですが、一方で個々のストーリーがどうにも物足りないのです。いくつか、物語の一部がリンクしている部分もあるので、そういった部分はそれぞれのストーリーに厚みをもたせて物語を立体的に感じさせてくれるのですが、それも結局一部だけなのでやはりそれだけでは補えないわけで。。。
そして、一番違和感をおぼえたのはM7.0以上で震度6強の地震が起こったにしてはどうも被害がなさ過ぎるような気がするんですよね。
ちょっと不便だけど日常は営める程度の空間としか受け止められず、どうしても深刻な災害下にあることを読み取ることが出来ませんでした。そのあたりにリアリティを感じることが出来なかったことがこの作品を肯定的に受け止められない一番大きな理由かも知れません。
ただ、こうやっていろんな物語にチャレンジして作品の幅を広げていこうという意欲的な姿勢はすごくいいと思います。好き。